Jukebox (ページ5)

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これ以上は危険だ、と彼女は思う。
ユンギがすぐ隣にいて、ほんのり甘い香りがする。職業上香水は付けないだろうからきっと柔軟剤かなにかだ。心臓に悪い。男らしい手や綺麗な顔につい目が行って、落ち着こうとするとお酒が進んで、飲めば飲むほど今まで積もりに積もった想いが顔を出す。完全に悪循環に陥っている。

あれから、３杯目のウイスキーを飲み干して、時刻は１時半を回ろうかと言うところだった。私の仕事の話をして、ユンギの仕事の話を聞いて、趣味の話をして、時間を忘れるほど話し込んでいたら終電はとっくに過ぎていた。ユンギは恐ろしく酒が強い男で、既に４杯目なのに未だ表情を変えずに淡々と飲んでいる。

「お前いい加減にしろよ。さすがに飲みすぎ」

ユンギの低い心地いい声がふわふわした私の頭に響く。
臙脂色の眼に、暗い照明が映り込んでとても綺麗だ。

「なに」
「すき」

突然こぼれ落ちた本心に驚いて口を覆う。

「ぁ.....はは...いや、冗談...」

ごまかすためにグラスに手を伸ばそうとしたら、手を掴まれた。

「酔いすぎ。没収」

私がゆっくりちびちび飲んでいたお酒をあっというまに流し込んで、自分の分も飲み干す。

「タクシー呼ぶから待ってろ」

そう言ってユンギが立ち上がった。

「あ、まって、おかねっ…」

限界を超えて飲んでいた私の体は立ち上がろうとしても耐えられなくて、足が床に着いた瞬間に視界がぐらっと揺れた。

「あっぶな…」
「ごめ…」

とっさに体を支えてくれたユンギとの距離の近さに絶句する。
至近距離で目が合って急に頭の中が真っ白になった。いつのまにかレコードの音は止んでいて腰に回ったユンギの腕の感触と体温だけが生々しく感じられる。

「ゆ、」

ユンギ、と名前を呼びかけた私の唇にユンギの形の良い真っ赤な唇が重なる。
さっきまで飲んでいたウイスキーの香りがして苦い味を思い出した。

何回か、啄む様にキスをして、ゆっくりユンギが離れていく。若干うるんだ臙脂色の眼を見つめ返しても、彼が何を考えているかわからない。私は無意識にユンギのシャツを掴んでいた。

「A、」

こんなときに名前を呼ぶなんて、なんてずるい男だろうと思う。

「どこに帰りたい？」

ぎゅっと彼のシャツを強く掴むとユンギは満足げに唇を歪めて、また私にキスをした。