Jukebox (ページ4)

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なに、とユンギがこちらを向かないまま言う。

「飲ませたいの」
「いや…ただ、酔うとどうなるのかなって」
「別に、普通」

グラスを洗い終わったのか手を拭ったユンギは、サロンエプロンを外してカウンターに置く。洗い物の音が消えて、静かな空間に響くピアノのレコードの音がユンギと二人きりであることを強く意識させた。急に落ち着かなくなってウイスキーを流し込む。頬が熱い。

ユンギが冷蔵庫を開けて小さな箱を取り出しカウンターに置く。黒い高級そうな包みに赤いリボンがまかれていて随分と上品な箱だ。

「なにそれ」
「チョコレート」
「ユンギって甘い物食べるんだ」
「よくしてくれてる人がウイスキーに合うからってくれたんだよ」
「ふーん」
「食うか？」
「いいの？」

チョコレートは丸い形でリボンと同じ真っ赤で艶やかなコーティングがされている。

ユンギが皿にいくつかチョコレートを載せてくれた。
ひとつ口に運んで噛むと甘いミルクチョコレートの中からとろっとしたナッツのクリームが出てくる。
ウイスキーの苦さとアルコールっぽさが和らいでいく。

「おいしい」
「そりゃよかった」
「おかわり」
「なんの」
「ウイスキー」
「まだ飲むのかよ」

あきれ顔で笑って、ユンギはさっき私に出したウイスキーと、もう一本別のウイスキーを後ろの棚から取り出した。ロックグラスと氷を二つ分用意して、それぞれにウイスキーを注ぐ。私はもうすでに完全に酔っていて、ユンギの大きな手が氷を削る様子とマッシュヘアの黒髪が微妙に揺れているのをぼやけた視界でぎりぎり捉えていた。

「おまたせ」

ウイスキーの入ったグラスを私の前に置くと、ユンギは自分のグラスとウイスキーボトルをもってカウンターの外の私の隣に腰かけた。

ミンユンギの長い指がチョコレートを掴んで、口に入れる。

「うま」
「だよねえ」
「あげなきゃよかった」
「意地悪」

ユンギは少し笑って一気にウイスキーを煽る。
彼の喉仏がゆっくり嚥下するのに見惚れる前に目を逸らした。