クリエイト:ノーマル (ページ5)

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目の前にある大きな会社は有難いことに雨宿り出来るレベルの屋根があった。
もう直ぐしたら21時。
ちらほらと帰宅するサラリーマンたちが横目で俺を見る。なんだ、何か用かと叫びたくなったが心の中にしまった。

「あれ…ほくと？」

聞き覚えのある声が俺を呼ぶ。目の前にはハーフ顔の身長高い人と車椅子の兄ちゃん。

「あれ！大我さんの弟さんすか！」

フランクな喋り方の隣の人は多分俺の苦手なタイプだ。

「そう、北斗ちょっと人見知りなの」

とかなんとか兄が言う。

「…傘。持ってないと思ったから。迎えに来た。」

…気まずい

「え！弟さん超カワイイ！」

返事が聞きたいのはあんたじゃない…なんて初めましての人に思うのは失礼だと思うけど、少し鬱陶しく思ったのは俺1人だけの内緒。

兄はそんなの気にしてくれたの？良かったのにありがとうなんて微笑んだ。
隣の人に、ジェシーじゃあおれ弟と帰るね。また明日、と言った。

兄と二人きり。
少しさっきよりも雨が止んでいる。
静かな夜にタイヤとアスファルトが擦れた音だけが響き渡る。

「俺が傘持っていってないの気づいてたの？」
「…傘立てに2本あった」
「あーなるほどね。ありがとね、助かったよ」
「ん」

隣で、危うくびしょぬれになって帰るとこだったなあなんて呑気な事を。

「…兄ちゃん。」
「ん？」
「何かあったら、頼っていいんだよ」

この文の主語は『俺に』だ。
恥ずかしくてストレートに言えやしないけど気づいて欲しい…

「へへ、そっかあ。
頼っていいのかあ…。知らない内に大きくなったね、北斗も。」

ちょっとしゃがんでと言った兄ちゃんは、くしゃくしゃと俺の頭を撫でた。

「もう、やめてよ。髪崩れちゃう。」
「ホント可愛い弟だなあ」

2人で帰る15分間は長いようで短かった。
今、やっと少し兄ちゃんに近づけた気がする。俺ららしい距離感に。