keep going (ページ36)

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36 樹side ページ36

昨日お見舞いに行った北斗から
きょもの調子があまり良くなかったということを聞いて不安になりながら病室に向かった。

昨日より悪くなってたらどうしよう、とか
思いはマイナスな方に行って。
でも病室から聞こえてきたのは最近ずっと聞こえていたきょもの呻き声なんかじゃなくて、
俺の大好きな歌声だった。

樹「…きょも？」

京「ん？あー、樹。おはよう
あ、こんにちはか？笑どっちでもいいや」

樹「そんなに起きてて大丈夫なの？」

京「さっき、鎮痛剤打ってもらったから。」

樹「無理はダメだよ」

京「わかってるって笑
お母さんみたい、樹。」

と言って、また歌い出したきょも。
やっぱり俺はきょもの歌声が大好きだ。

しかし、痛みは引いたものの
運動してないせいか、歩くことや立ち上がることは出来なくて、ずっとベッドの上にいた。

京「ねぇ、じゅりー？」

樹「どしたの、きょも」

京「外、行きたいなあ」

樹「外？空気吸いたいの？」

京「ううん、なんか、久しぶりに外で歌いたい。」

樹「そっか、じゃあ、車椅子用意するね」

京「ん、ありがとう。助かる」

自力で車椅子に乗れないきょもをお姫様抱っこして車椅子に乗せ、
屋上へ向かった。

屋上はいろんな人がいて、
多分身内が入院しててその人の洗濯物を干してる人。

お婆ちゃんの車椅子を押している孫。

看護師さんと楽しそうに話してる中年のおじさん。

小児科の子供たち。

きょもは、すうっと一息吸って

京「この星に溢れてる光り集めて

君を照らしていくforever

瞳の奥に

まだ僕はいない

歯がゆさも抱きしめながら

…」

キャッキャッと遊んでいた子供たちも、
おじさんもお婆ちゃんも孫も看護師さんも
きょもの方を向き、リズムに乗って手を叩き出した。

中には涙を流してる人もいた。

勿論俺も涙が止まらなかった。

動画を撮りグループチャットに送った。

京「その全て、僕の手で守り続けて行くまで」

歌い終わったきょもは一礼して、ココ最近で1番の笑顔で俺のことを見た。

樹「ん、よかったよ、きょも。
戻ろっか」

京「樹泣いたでしょ～」

樹「っばか、泣いてないよ」

京「ふーん」

きょも昔のように子供っぽい笑顔で前を向き直して、
アイドルだった時みたいにみんなに手を振って屋上を去った。