同窓会とレモン/trnn ページ22
「…あの時の、全然気にしてないよ。こういうと未練タラタラにしか聞こえないだろうけど、あの時はまだお互い若かったしね」
「いや、お前だからそんなこと言って本気で気にしてねぇだろ」
あれ、見透かされてる。と言えば小さく鼻で笑ってから煙草を蒸し始めた。どうせなら私も吸っちゃえ、と1本口に咥える。
「……最近は、どう?」
「…あー、特になんもねぇよ。お前は?」
「私もなんにもない。あ、ただ大学入ってからはずっと、なんか面白くないなーって感じ」
1番楽しかったのはやっぱ高校かな、と呟けばそうだな、と返された。大学では特別話が合う人も仲良い人もいなかったし。1番話が合った人っていえば…と考えてハッとする。
「でもお前がそんなやつで安心したわ。変に引きずるやつよかよっぽど楽だしな」
「私も、あんたがそんなやつでよかったよ。話なんかも1番合うしね」
友人独特の距離感ってものが丁度良かったんだろうな、彼とは友人でいるのが1番だったというまでのことだ。
「これからもよければ普通に「友人」として、他に3人くらい集めて騒ぎたいもんだね」
「まあそうだな。あいつらなら変な気回しそうだけど」
その後は何気ないような会話に花を咲かせた。最近出たあのゲームはどうだっただの大学の時にいたあんなやつがどうだっただの、普通の友人のノリで。
結論としては、高校時代付き合ったのはお互いの合意の上忘れよう、と言うことで固まった。その後向かった会場ではすでに出来上がりかけの友人や酔った勢いで告白を始める元同級生の姿があって、2人で顔を見合わせて笑った。
不安の多かった同窓会も無事に終了して、ほんのりと酔いの回った状態で帰宅した。途中で立ち寄った店でレモンパイを買って帰り、家に帰ってから食べてみると、昔の味が嘘のように甘く感じた。トークアプリには、彼と今度会う時の予定についての会話が残っていた。
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