お花畑の魔法-1-/nnc ページ11
気づいたらそこは花畑だった。
桃色に朱色。蒼や橙。狐色に、空色の花々。
色とりどりの花が満開に咲き誇る中に私は寝ていた。
どのくらい眠っていたのだろうか。
あの人はどうなったのだろうか。
あの人なんて誰のことかわからない。
口をついて出た言葉に自分が一番困惑していたりする。
自分が誰かもわからない。
ここはどこ?
何もわからない。
とりあえず、私は寝転がったまま周りを見渡してみることにした。
大きな森。
紫色の謎の雰囲気を纏う木々たちの間から、木漏れ日なんてものは何一つ地面に落ちていなくて、全体的に暗い印象の森。
生き物の影はなく、周りは完全に木々に鎖されている。
それでも、小鳥の囀りも、鹿の足音もしないのに、隣でかすかに音が聞こえてきたのだ。
花の茎のあいだから覗いてみると、そこには確かに人が眠っていた。
スースーと心地のいい寝息を刻みながら眠る人。
ゆっくりと起き上がってみる。
すると、その音に反応して隣の人は目を覚ました。
眠そうな目をこする彼は、しばらくして私に気づき、「やぁ、」と声をかけてくる。
綺麗な二重。そして口元についてる花が、喋る度に動くのが少し面白かった。
「ふふふ、」と私が笑うと、彼も笑う。
静かな森に、笑い声が響く。
なんだか懐かしくて、なんだか切なくて。
綺麗な翠の眼。
ハロウィンのような色調のこの森には似つかない、翠の彼の瞳はキラキラと輝いていた。
元気そうに笑う彼の姿に涙が溢れそうになったのは気のせいだろうか。
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