桃色の片思い (ページ4)

今日:22 hit、昨日:12 hit、合計:108,939 hit

04.サイン会序盤ページ4

.

横へとスライドすれば
ちょっと退屈そうな顔をしていた男性

『…』
「ちょっと、来てたんなら言って下さいよ」

『すいません』

そんな男性を見ていれば
私の視線を感じ取ったのか、そう言った

…だって、話掛けるタイミング分からないし

.

「名前は？」
『シワンです』

「シワンさんね
　今日はどちらから？」

.

えーっとたしかシワン先輩は
『慶尚南道』って言ってた気が…

「慶尚南道の割に
　随分と標準語に慣れているみたいだね？
　と言うか…カタコト？」

『(シワン先輩は)
　カタコトではないと思います！』

「そうなの？
　(何だこの子、独特だな)」

私は今までサイン会なんて行った事がないけど

こんなにも
アイドルと距離が近いなんて思ってもいなかった

凄い、友達だと勘違いしてしまいそうだ

.

そんな風に思っていれば
またも“次へどうぞ”との声が聞こえ横へとスライドした

.

“それでね、オッパ私～”

“うんうん、そうなんだね”

今度の方は前にまだ人が居て
私はその人が終わるのを待っていた

“時間です、次へ移動して下さい”

“嫌！まだオッパと話するの！”

“ちょっと、貴方！”

.

『…』

熱烈なファンの一面を見た気がした

冒頭のタックルに続き
ここのアイドルのファンの皆さんって治安が悪いの…！？

ちょっと怯えていれば
「見苦しい所、見せてごめんね」と言われた

.

『い、いえ大丈夫です』

「あはは、絶対大丈夫じゃないでしょ」

大丈夫だと言えば
男性は笑いながら、大丈夫じゃないでしょ。と

.

「サイン会に来たの初めて？」
『はい』

「そっか、今日は楽しんでね」
『ありがとうございます』

渡したアルバムに
スラスラとサインを書きながら話す男性は

「そうだ」と言ったかと思えば
「これあげる」と小さな物を私にくれた

.

『あめ…？』
「何か、緊張しているみたいだから」

「この飴でも舐めながら
　気楽に僕達のイベントを楽しんでよ」

「また会えるのを楽しみにしているよ」

じゃあね、とスマートに言うこの男性は
きっと私生活でもモテているんだろうな。なんて

余計な事を思いながら
私は次の人へと向かって行ったのだった

.