【短編集】Dear my princess【浦島坂田船】

＊ ページ16

「志麻花魁の部屋はここ？」


禿「え、あ、はい！」


別の禿の子が返事をするが声の持ち主は


し「おん、な…？」


禿「はい。身請けされる方は女性の主さんです」


し「そっか…」


女性が身請け、金銭的にはまず有り得ない事だろうに


しかし


「ねぇ。志麻花魁…ううん、志麻くん」


襖越しに聞こえた声は柔らかくそして、懐かしかった


し「え………A…？」


「うん。ねぇ志麻くん。迎えに来たよ」


襖の外から聞こえるのは幼い頃に別れたはずのAだった


Aの家は由緒正しくAは良家お嬢様


でもなんで…


「あの日の約束、覚えてる？志麻くんが行っちゃう時」


し「あ…」


そう言われて思い出した


【し「じゃぁ、ばいばいやな」】


【「待って！ね、指切りしよ。おっきくなったら私絶対志麻くん迎えに行くから！」】


【し「…うん！！待っとるな！」】


あの時Aは確かに迎えに来ると言って指切りをした


指切りは約束の意味を持つ


そして花魁の世界では


し「結婚…」


「うん。あなたを、婿に迎えに来ました。志麻花魁、私のAのものになってくれますね？」


開けられた襖には、大きくそして誰よりも美しく育ったAが立っていた


し「…はいっ！」







し「わっちをどうか、買ってくんなまし」


幼い日に交わした約束(婚約)を今


今宵あなたの元へ







指切りげんまん







嘘ついたら針千本のーます








指切った

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