こぼれる ページ23
決壊が、崩れた。
そこからは、本当に崩れた。
一度でも肌を合わせたことのある相手とは
瞬時に感覚が蘇ってしまう。
そっちの意味で触れ合ってしまえば、
痺れるほどの感覚が蘇る。
欲しかったのだと思い知らされて、
しがみつくように求めてしまう。
与えられると知ったから、尚更。
再会できたこと、話ができたこと、
食事してお酒を飲んで、ドライブして。
私は切り棄てられたんじゃなくて、
言葉が足りなくてすれ違ったんだと知り
懸命に何度も誘ってもらってきた。
それだけでも感謝しなきゃいけないのに、
どんどん欲深くなって言葉も強くなって、
八つ当りみたいにぶつかった。
それでも翔くんの言葉は変わらなかった。
−A、俺の彼女になって欲しい−
−俺は本気だよ、一生かけて言ってる−
大きな熱い掌を全身で受け止めながら
再会してからの彼の言葉を頭の中で聞く。
−Aを取り戻したくて
話したくて、触りたくて−
今、叶っているけど、これでいいの？
ねえ、私、もう角を曲がっちゃったのよ、
二十歳の初々しさなんてどこにもなくて、
色々変わってると思うんだけど、大丈夫？
私を組み敷いて、嬉しそうに頬を寄せる。
瞼、鼻先、頬、耳、あちこちに唇が降りる。
「A、ちゃんと俺を見てて。
誰に抱かれてるか、分かってて」
切ないお願いをされて理性が燃え落ちる。
あなた、そんなに可愛かったかしら？
「抱かれたい人は、一人だけよ、大丈夫」
安心させたいのに、上手く言葉にできない。
でもあなたは、うんって、微笑んでくれた。
縋りついた背中の逞しさ、私、知らない。
慣れた感じが伝わってきて、少し悔しい。
弾いて、滑り込んで、撫でて、宥めて、
そして強く穿たれる。
仰け反って、跳ねて、揺れて、張りつめる。
バラバラになる感覚から一点だけに集まって
奥の方なのに鋭くて、何か、全部こぼれる。
すごく下品なんだけど、でもその瞬間、
“ああ、翔くんのなのね“って思ったの。
絶対、一生言わないけど。
「A、すごい絡む」
さっきと同じ、掠れた声が注がれた耳から
指先まで広がっていく、疼くような恍惚。
「翔くん、やだ」
緊張していても愉しんでいるの、分かるわ。
もう”そういうもの“になってるのよね。
「ああ、翔くん、私の」
「ん、Aのだよ、ほら」
甘いだけじゃない、少しぴりっとして、
昇りつめる時の勝手さがいい。
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おはな(プロフ) - mamoさん» 書いていて、切なくなって手が止まる、そんなことが何度もありました。すれ違う時間の長さ、疲弊しましたよね、きっと。それもリアルな彼との距離かもしれないと思ったりもして。でも最後のやりとりは考えていた通りにできました。優しいコメント、ありがとうございます (2021年6月13日 20時) (
レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - きーたんさん» 大好き、と言って下さって、ありがとうございます。すれ違いも甚だしくて、一体どうまとめられるのかと迷った時期もありました。最後の２行は絶対に書こうと思って、そこを目指して何とか辿り着くことができました。いつだって「信じることがすべて」ですから。 (2021年6月13日 20時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - たまりんさん» 今回のお話は、お察しの通り難産でした。全く進められない経験は初めてで、迷走しました。環境の変化を侮ってはいけませんね。ですが、この後も書いていこうと思っています。たまりんさんにもお越し頂けるよう頑張ります。丁寧なコメントをありがとうございました。 (2021年6月13日 20時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - ていくさん» この先もきっとあのお部屋の景色は何度も蘇って、その度に宥めてもらうのだろうと期待して書いていました。そのくらい甘やかしてもらわないと、ですよね。繋がって支え合える二人になって欲しかったので頑張りました。コメントありがとうございます、励みになります。 (2021年6月13日 20時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - にゃんちきさん» 女性側のご両親となれば、心中複雑で譲れないものがあって然るべきですよね。そこを頑張ってもらいたいなと思いました。頑張れるような男になったからこそ、この展開もあり得るかと。最後は分かり合えるようにと願いながら書きました。読んで頂きありがとうございました (2021年6月13日 20時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おはな
| 作成日時：2021年4月4日 0時
