間違い ページ32
Aへ想いを秘めたまま、
やはり俺の立ち位置は兄の親友で
先輩で、飲み仲間でい続けながら
チャンスを作ろうとうかがっていた。
だが、焦りはしない。
熱い想いを押し留めて
素っ気なく隣にいるしかない現実の中でも
ゆっくりとこちらを見てもらえるよう、
少しずつ優しさの質を変えていく戦略で
一見、何も変わらずにいる。
焦ってはいけないと思っていたのは、
大野さんの出会いから失踪までのことで
君は傷ついたままだからだ。
まだ、君のその傷を覆うかさぶたが
充分には乾いていないからだ。
それでも思わせぶりな例の写真の真相を、
急に右の薬指に現れた指輪の真相を、
何とか聞き出すことに執着し、成功した。
意識して土曜日の休日に約束を決め、
ラフな服装、雰囲気で緊張を和らげる作戦だ。
でないと、こっちが荒ぶってしまうからな。
成果は上々、Aはあっさり白状した。
「友達と飲んだの。相手はまどかよ。
指輪は母にもらったの。それだけ」
そうか、あのまどかちゃんか。
相変らす仲良しなんだな、へえ。
男絡みのものではないと知って安心でき、
そこまでは良かった、良い流れだった。
そりゃあそうだろ、うん、
大野さんとのことから数カ月だし、
仕事は忙しいし、勉強だってしてるんだし
Aに時間的余裕はないはずだ。
だが、緊張が解けたことに安心した俺は
ぞんざいな言葉で君を怒らせてしまった。
俺の思考は緩みまくった末に
着地点を間違えたんだ、安易だった。
「やっぱりそんなことじゃん。
そうだよな、そうだよ、Aだもん。
はあ、心配して損した」
俺の言葉に見る見る君の頬は紅潮して
瞳は潤み、口をぎゅっと結んだ。
初めて見る、感情をあらわにした表情に
驚いて固まってしまったことも失敗だった。
「もういいかしら、失礼しても。
私、帰りたくなりました。
誘ったのはそちらの方なので
お会計をお願いします。ご馳走様でした」
さっと立ち上がり、出口のドアに向かう君は
俺が追いかけることも望んでいないようで
躊躇なく店を出て行った。
一瞬、固まってしまったものの、
慌てて会計を済ませて店の周囲を探したが
君の姿を見つけることはできなかった。
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おはな(プロフ) - いちごさん» いちごさん、少し前のお話を、こうして褒めてもらえるなんて嬉し過ぎます。気になる所はもちろんあって、もう少し何とか出来なかっただろうかと思ったりします。それは、まあ、これからのお話で頑張ってみますね。どうもありがとうございました。 (2021年7月17日 17時) (
レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
いちご(プロフ) - 久しぶりに読みたくなって読み返していました。いつ読んでもやっぱり素敵な作品です。 (2021年7月14日 11時) (レス) id: a03e1783da (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - むにゃむにゃんさん» 幸せな人を見ると幸せになりますよね。そうやって繋がっていけたらと純粋に思ったりします。お話の二人はきっと幸せまっしぐらですね。甘い甘い時間を大切に過ごしてくれることと思います。むにゃむにゃんさんの願いも叶いますように。 (2020年4月26日 23時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - にゃんちきさん» 確かに現実から逃げたくなるような毎日ですね。厳しい現実に妄想の体力も奪われそうです。だからこそ、いつもと変わらない彼らの笑顔に安心します。辛いだろうし無念だろうし、でもちゃんと笑顔でいてくれる強さが頼もしい。私も次の準備を頑張ろうと思いました。 (2020年4月26日 23時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - さとさん» さとさん、嬉しいコメントをありがとうございます。彼の甘い甘い気持ちの変化、書いて良かったなあと思っています。主人公はお嬢様なのでどこか鷹揚とした感じで書きました。気に入って頂けて良かったです。次の準備も始めようと思っています。またお逢いできますように (2020年4月26日 23時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おはな
| 作成日時：2020年3月15日 23時
