花屋 ページ31
実家に帰る道を焦らず走っていた時、
信号待ちの車内から見えた花屋の
綺麗なディスプレイに魅かれて左に寄った。
母親に花を土産に持って行くのも悪くない。
ご機嫌取りに効果はありそうだと思って。
１２月の花はカトレアで、色は様々あり
花言葉は「優雅な女性」なんだそうだ。
これは、母親のテンションも上がりそうだ。
白い大ぶりなカトレアを中心に
小さな薔薇や香りの良いグリーンを入れて
母親が好きそうな感じに出来上げてもらう。
「お母様にブーケのプレゼントなんて
とっても素敵です。
照れずにお花を贈れる男性は少ないですし」
「そういうものですか？
安易だと思われそうですけど」
若い女子の店員さんは、強く否定をする。
「とんでもない！安易ではないですよ！
お相手に似合うように一輪ずつ選ぶ時間は
そのままで、既に素敵な贈り物ですから。
お母様、きっとお喜びになります」
「それは、心強い」
力説は、たじろいでしまう程で
花を束ねながらも続いている。
その間、何となく店内を見回していたら
黄色ともオフホワイトとも、クリーム色とも
何とも言い難い絶妙な色合いの小さな薔薇に
目が止まった。
花弁の縁は、色が濃くなっていて
一輪一輪、色が微妙に違っている。
「綺麗だな…」
つぶやいてしまった。
「さすがです、お目が高いですね。
なかなか出ない色なんですよ。
今日、入ったばかりで活きもいいんです。
こちらの大きめのアプリコット色と
合わせると、華やかになります」
「なるほど」
母への花を束ね終えた店員の女性は
薔薇の数本を寄り合わせて見せてくれる。
派手さはなく、品良くクラシカルな感じが
Aに良く似合いそうだと思ったら
ちょっと表情が緩んでしまった。
「こんな素敵なお花を贈ったら
きっと喜ばれますよ。保証します」
勧められたものの、Aに会うのは
まだ数日先だ。
それにいきなりの花束攻撃なんて
結構、ハードルが高いような気もした。
「また来ます。
その時には、相談に乗ってくださいね」
母親への花束を手に店を後にした。
評判のスイーツの他に、ブーケと言う
新たなアイテムをゲットした気分だった。
そして、実際に役に立ったわけで、
俺にとってその店は特別な花屋になった。
これからだって君に花を贈る時には
この店で、と思っているんだ。
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おはな(プロフ) - いちごさん» いちごさん、少し前のお話を、こうして褒めてもらえるなんて嬉し過ぎます。気になる所はもちろんあって、もう少し何とか出来なかっただろうかと思ったりします。それは、まあ、これからのお話で頑張ってみますね。どうもありがとうございました。 (2021年7月17日 17時) (
レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
いちご(プロフ) - 久しぶりに読みたくなって読み返していました。いつ読んでもやっぱり素敵な作品です。 (2021年7月14日 11時) (レス) id: a03e1783da (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - むにゃむにゃんさん» 幸せな人を見ると幸せになりますよね。そうやって繋がっていけたらと純粋に思ったりします。お話の二人はきっと幸せまっしぐらですね。甘い甘い時間を大切に過ごしてくれることと思います。むにゃむにゃんさんの願いも叶いますように。 (2020年4月26日 23時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - にゃんちきさん» 確かに現実から逃げたくなるような毎日ですね。厳しい現実に妄想の体力も奪われそうです。だからこそ、いつもと変わらない彼らの笑顔に安心します。辛いだろうし無念だろうし、でもちゃんと笑顔でいてくれる強さが頼もしい。私も次の準備を頑張ろうと思いました。 (2020年4月26日 23時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - さとさん» さとさん、嬉しいコメントをありがとうございます。彼の甘い甘い気持ちの変化、書いて良かったなあと思っています。主人公はお嬢様なのでどこか鷹揚とした感じで書きました。気に入って頂けて良かったです。次の準備も始めようと思っています。またお逢いできますように (2020年4月26日 23時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おはな
| 作成日時：2020年3月15日 23時
