Destiny �� ページ30
「これは、宝谷社長。
Aさんとご一緒とは羨ましい。
益々お綺麗になられましたね」
「とんでもない。
社の経営に興味を持ち始めて
未だに勉強三昧の困った娘です。
お恥ずかしい」
狸親爺という言葉が思い出される会話を
一体どんな顔で聞けばいいのだろうか。
貼り付けた笑顔を全く動かさないままで
私は気配を消して、立っている。
大野さんのお父様も例にもれず、
なかなかの御仁のようだ。
「ああ、智くん、だったかな。
娘のAを紹介しよう。
A、ご挨拶なさい」
まさかの初対面的な扱いをされるの？
それは、いかがなものか。
僅かに躊躇すると、澄んだ声が聞こえた。
「いえ、Aさんとは松本潤くんの
誕生日の際にお会いしました。
その時に自己紹介させてもらえて
光栄な時間を頂きましたから。
Aさん、覚えてくれてます？」
この場面でお付き合いしています、とは
確かに言い難いとは思いますよ、大野さん。
ですけど、父の思惑にだって
気付いてないはず、ないでしょう？
それなのに、その感じで？
「ええ、もちろん覚えております。
楽しいお話を伺いました」
湧き上がる疑念を押し留めて
私の笑顔は崩れない。
父の小さなため息も聞き逃さない。
私に負けない位の大野さんの形の良い笑顔、
じっとその瞳の奥を探る。
もう会話の内容は頭に入って来ない。
父が適当にタイミングを計り、
大野さん達と離れた。
「彼は主役だ。
全ての方と挨拶をしなければならない。
油断もできない。
理解しなさい、A」
父に諭され、無言で頷く。
「まあ、私は忘れないがね」
「はい？」
「大切な娘の気持ちを思いやれない男を
忘れないと言ったんだ。帰るぞ」
私を連れて来ると決めた時には
既に報告を受けていたんだろう。
父は今日、大野さんを試すために
ここに来た、間違いない。
「心配するな、心の狭い父親が拗ねて
難癖をつけているだけだよ、A」
「うん、分かってる」
この日、私は実家に帰った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 804人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
おはな(プロフ) - ていくさん» 色々な想いが交錯します。ていくさんは、いかがですか？甘ったるいだけでは進まない、大人な感じの恋を書こうと思っています。伝わっている様子が分かって嬉しかったです。まだまだ頑張ります！ (2019年11月16日 2時) (
レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - いちこさん» いちこさん、誇りと宝物を手放さずにいましょうね。劇的な変化に色々な気持ちになりますが。褒めて頂いたことを支えにお話を進めていきますね。次の章でもお逢いできますように。 (2019年11月16日 2時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
ていく(プロフ) - おはなさん、いつもお話ありがとうございます。大野さんとの関係、私にはとても新鮮に読ませていただいてました。なぜこうなってしまったのだろう、否、致し方なかったのだ、という思いが交錯して、大人の主人公さんの感情が伝わってきます。続き楽しみにしていますね。 (2019年11月10日 15時) (レス) id: aad3aa56c7 (このIDを非表示/違反報告)
いちこ(プロフ) - 丁寧な描写が小説を読んでるような…おはなさんのお話は無料でいいのかしらと思うほどでです（ ; ; ）大人の恋を少しでも長く味わいられたら嬉しいです！燕尾服を着て綺麗なユニゾン…本当に誇りですね。彼らと同じ時代に生きられたことが財産です！ (2019年11月10日 11時) (レス) id: 55f5fbef29 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - さる子さん» さる子さん！共有できて嬉しいです。くじけそうになると言葉で支えてくれる彼に今日も好きが増しています。これはこれで幸せで、雑音をきちんと排除して純粋にいたいと思いました。さる子さんに褒められて調子に乗って次の更新に向かいます。ありがとうございました。 (2019年11月10日 9時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：おはな
| 作成日時：2019年9月7日 21時
