私の事故 �� ページ11
相葉さんは一度も私を見なかった。
ずっと俯いていたようであったし
窓の外を睨んでいたようでもあった。
唯一、確かなこと。
はっきりと、私は疎まれた。
あんなに優しかった人に拒まれた。
どんな言葉で了承したのかも
どんな顔で社長室の扉を閉めたのかも
覚えていないの。
足がもつれて転びそうで
一秒でも早く立ち去りたくて
非常階段のドアを開けた。
一階分を走り降りて
手すりにしがみ付いてしゃがんだ。
唇が震えて止まらなかったのを
冷静に、不思議だなあと思ったりした。
何か、ドラマみたい。
調子に乗った社長令嬢が親や家の力で
純粋な恋人たちの仲を切り裂いて
自分の思い通りにしようと画策する。
そして見事に純愛に敗れ去るのよ。
自分を痛めつけるために
最悪のシナリオを想像した。
まさか、そこまでとは思っていなくて
姑息なひとつの防御反応だった。
事実はさらに厳しかったのよね。
数日後、ようやく知ったのだけれど。
父が私の部屋まで来て告げた。
「雅紀くんには想う人がいるそうだ。
ご両親は許さないと断言されていたよ。
陳腐な言い方だが、
つり合わない家のお嬢さんらしい。
長男だというのに恥ずかしい話だと
頭取自ら謝罪にみえたんだ。
A、君は何も悪くない。
傷つく必要もないんだよ、いいね」
私に優しく諭した父は、
すばやく具体的に行動した。
父個人の銀行口座を丸ごと移し
母もそれに続いた。
移した先は他系列の銀行で
相葉さんの勤め先とは
目と鼻の先にある店舗を選び、
手続きは自ら足を運んだそうだ。
親ばかにも程があると兄も驚いていた。
もちろん詳細は総本家に報告されていたし
遅かれ早かれ陽の下に明らかにされ、
良い事は何も起こらないと分かってはいた。
翌月、相葉さんは海外に異動になり、
彼女は地方に転勤になったらしい。
それは私のためでも宝谷のためでもなく、
ただ広いようで極端に狭い、
脈々と理不尽が流れて降り注ぐ、
この世界の秩序のため。
明らかなペナルティだった。
相葉さんには、彼女には、
本当に申し訳なかったと思っているし
私のこの一生の中で、いつかどこかで
どうにかして謝罪したい気持ちはある。
それはもう、今となっては
偶然に頼るしかなくてとても難しい。
私は無力、極まりない。
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おはな(プロフ) - ゆいさん» ゆいさん、お返事が遅くなってしまってごめんなさい。確かに彼の登場頻度が低すぎますよね、そちらもごめんなさい。ちょっとゆっくりになってしまっていますけど、お付き合い頂けると嬉しいです。 (2019年9月7日 21時) (
レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - mikkyさん» mikkyさん、お返事が遅くなってしまってごめんなさい。映画の時の道明寺が色っぽくて、男としての成長が見えて大好きなんです。彼が３０半ばになったら、どれほどカッコいいだろうかと。妄想が膨らみます！コメントありがとうございました。 (2019年9月7日 21時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - 翔くんとの関係性がまだよく分からなくて、そわそわしながら読んでいます。近くにいる二人に恋愛沙汰はなさそうで、でも可能性を勝手に感じたりして。あれこれ想像しながら楽しんでいますから、ペースを気にせず、進めてください。ついていきます！ (2019年8月28日 23時) (レス) id: 57325286d2 (このIDを非表示/違反報告)
mikky(プロフ) - 更新ありがとうございます^ ^イケメンは声までもがイケメン。納得です。大人になった道明寺潤くんさぞかしイケメンなんでしょう。変わらずのパーマかな。妄想が気になります。またの更新待ってます^ ^ (2019年8月28日 11時) (レス) id: fd56c0dfc1 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - mikkyさん» mikkyさん、お言葉通り甘えさせて頂いております。今回のお話は、私なりに納得できるように書きたくて、ペースを落としております。２４TVの過去映像にときめき、現在の彼にヤラれ、楽しい週末を過ごしました。妄想力も上がりそうです。コメントありがとうございました (2019年8月27日 23時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おはな
| 作成日時：2019年7月20日 23時
