震える君 ページ46
ずるい大人だと思う。
余裕があるふりをしなければ、自分を保てないなんて。
ただ一言「愛しい」と言いたいだけで、
それしか言える言葉がなくて、目を閉じる。
浮かぶのは、昨日の困惑した君の顔。
唯は、俺のことを思い浮かべているんだろうか。
君がくれた告白が本当で、真実で、
今、もし、寂しがっていたら。
慰められるのは、俺しかいないじゃないか。
そう思い直した。
唯のマンションに車で向かった。
明かりは点いている。
電話をかける。
「何、考えてた？」
「先生に、会いたいって。」
はあ、そうなのか。そうなんだ。
「いいから、降りておいで。待ってるから。」
来てくれるのか？
心配する間もなく走ってくる君が見えた。
抱きとめる。君を抱ける幸せに、心が震える。
君がどうしてそんなに臆病なのか、理由が知りたい。
聞いてみると、
「このまま続くはずがないって思って。
少しでも先生とすれ違うと、もうだめだって気になって。
ひとりぼっちだって気になるんです。」
ああ、同じじゃないか。
二人とも不安なんだ。
どうすればいいんだ。
やっぱり、ちゃんと話すしかないか。
誰かに、よもや真紀子自身から聞く事にならないように。
今、話すしかないのか。
分かったよ、唯。
話すよ。
俺の過去を。
君がもっと傷つくことになるのが心配だけど。
その時は、抱きしめるよ。
だから離れないでくれよ。
君を想うこの気持ちを、何とか分かって欲しい。
少し走って、コンビニの駐車場に止めた。
唯とは、心を繋げていきたいんだって伝えてみたけど
君は、やっぱり過去を気にしている。
何もない鳴沢さんのことは、簡単に説明できる。
でも。
「翔って呼んでた。」
ああ、そうだ。
俺が真紀子を慈しむ気持ちを捨て切れないからだ。
「そういうことですよね？」
「まあ、過去ね。」
沈黙。
どう順序立てて話すか考えていたら、
視界の端に震える唯の指先が見えた。
「唯？混乱してる？」
返事がない。飲み物を買ってくると言っても、何も言わない。
コーヒーとホットミルクを手にして、戻った。
唐突に君が、
「小椋先生との噂、本当だったんですね。」
と、言った。
知っていたんだな。それに耐えていたんだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 973人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
おはな(プロフ) - mysweet617さん» 初めまして、おはなです。コメントありがとうございます。そうですね、散々悩ませてくれた先生を、ちょっと振り回してみたいですね。デレデレゆるゆるな感じが出せるよう、頑張ります！苦手なところ、こうしてコメント頂けて嬉しいです。また、お立ち寄りくださいね。 (2016年8月22日 16時) (
レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
mysweet617(プロフ) - 初めまして。ずっと拝読させていただいてましたがコメントするのが苦手でして。大変遅くなり申し訳ございません。あ、堅いですね。先生が主人公ちゃんに振り回されるのみたいです！デレデレで30半ばな男子の浮かれまくりがみたいです！更新楽しみにしています！ (2016年8月22日 15時) (レス) id: 072f2852bb (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - 美希さん» 美希さん、コメントありがとうございます。先生に愛される幸せ、感じて頂けてるでしょうか。純粋に想い合う姿を書いていきますね。真紀子さんのお話も少しずつ準備しています。重めの内容になりそうです・・・。お時間頂きますが、待っていてくださいね。 (2016年8月21日 20時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - らんまるさん» らんまるさん、いつもコメントありがとうございます。苦悩する先生の魅力を共有できてうれしいです。その後は甘々モードも欲しくなりますよね。一途に恋する二人の気持ちを丁寧に書いていきます。がんばりますね。 (2016年8月21日 20時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - みいたすさん» みいたすさん、初めまして。コメントありがとうございます。ビターの後はデレデレ、そして振り回されるとか。見せつけちゃうのもいいかも。ちょっとずつ、それとなく入れ込んでいきますね。また、お立ち寄りください。 (2016年8月21日 20時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：おはな
| 作成日時：2016年7月30日 14時
