贈り物 ページ19
去年のクリスマスは
当直明けで翔さんと二人、
ドライブに行った。
緊張した私を翔さんが会話で和ませてくれて
中学生の頃、星が好きだったとか
サッカー部でお友達に女子も多くてって
そんな話をしたのよね。
その頃の翔さんに会ったら、
一目で好きになっちゃいそう。
そんなことを思い出しながらのお買い物、
ちょっとハイクラスのお店に来ている。
翔さんへのクリスマスプレゼントを求めて
品質の良さで定評のあるちょっと有名な、
紳士物のブランドショップ。
シンプルな単色使い、上質のレザー、
何よりハンドメイドに惹かれてベルトを選んだ。
「ああ、分かるわ。櫻井先生に似合うわね」
声の主は美宝さん。
彼女は無造作にお金を持ち歩く大野先生に
マネークリップを選んでいる。
思っていたよりずっと世話焼き系な彼女に
驚いているんだけどね。
仕事中には絶対見せない、柔らかな笑顔で
ひとつひとつ手に取っていて
美宝さんにこんな顔をさせるなんて、
大野先生ってすごい。
「ねえ、どっちが智くんに合うと思う？」
濃いチョコレートのようなブラウンと
光沢のあるブラック、二つを手にしている。
裏の洗練された紫色が上品で素敵なので
私の好みはブラウンだと言うと、
「やっぱりね。私もそう思ってたのよ」
満足そうに頷いて、決断していた。
私もひと目で気に入った黒いレザーベルトに決めた。
翔さんはきちんとスーツを着る人だから
つまらない洒落っ気は要らないと思うのよ。
オーソドックスで良質、使い勝手の良い物を
長く使ってくれたら嬉しい。
「プレゼント用にお包み致しますね」
濃紺のスーツ、控えめに微笑む担当者が
丁寧に梱包していくのを見ている。
「笑わないでね、A。
私ったら柄にもなく緊張してるのよ。
智くんが気に入ってくれるのかなって
ちょっと不安になったりしてるの」
へえ。何てこと。
この人が不安になるなんて
考えもしなかったわ。
「さらっと聞いて欲しいんだけど、
生まれて初めてなのよ、
クリスマスに男性に贈り物するってことが。
それもあんな智くんだし、自信がないの。
過去の女性達と比べたら、
絶対に私は一番可愛くないじゃない？」
鮮やかなオレンジのニットから
真っ直ぐな鎖骨が覗いていて
カーキのロングタイトスカートに
長い膝下がすっと伸びている美人が
心細そうに弱く微笑んでいる。
ああ、大野先生に見せてあげたい。
こんなに想われてること、教えたい。
私が男性だったら、間違いなく抱きしめているわ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 980人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
おはな(プロフ) - いちこさん» いちこさん、たくさん支えていただきました。ありがとうございます。青天の霹靂、衝撃は大きいですよね。正直、逃避も必要かと思います。少しずつ受け入れて彼らの決断に寄り添いたい、彼らの望みを叶えたいと思います。このお話が役に立つなら嬉しい限りです。 (2019年2月4日 22時) (
レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - sachiさん» sachiさん、こんな時だからこそ、つい慎重になってしまいます。それでも次のお話を準備しています。矢面に立とうと一歩前に出た彼の気概に惚れ直しています。叫びたいくらいです。辛さはありますが乗り越えたいと願ってます。惚れた男の決意ですもの。必ず。 (2019年2月4日 22時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - ろりぃさん» ラストのドレスの試着は、結構前から決めていました。その先は読んで頂いた方の中で、と思っています。色々ありましたよね、ほんと、おモテになるのでね。それでも余りある想いをお届けしたつもりでいます。伝わってようで嬉しいです。またお逢いできますように。 (2019年2月4日 22時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - sallysally67さん» 何度もコメントを頂きました。ありがとうございます。辛いことは幾つもあって、今もそうですし、挫ける原因なんていつでもありますね。でも信じて向き合って、強く願ってみてからでないと諦められません。彼が諦めないならきっと違う景色が待っているはず。そう思います (2019年2月4日 22時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - mamoさん» mamoさん、過分なお言葉と涙まで頂いちゃってありがとうございます。繊細で不器用で誠実な先生と恋をするのは大変でした。書いていても辛かった時期がありました。こうして書き終え、コメントを頂き、心底嬉しいです。感謝は私から贈らせてくださいね。 (2019年2月4日 22時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：おはな
| 作成日時：2018年11月4日 0時
