5 ページ5
「ねえ、松本さん」
声をかけたらすごく驚いてた。
返事はなくて、
きっと声も出せなかったんだろう。
「笠原、だよね？」
黙って、でも否定しない。
何だよ、もっと責めてやれよ。
女って何でもなくたって被害者ぶるじゃん。
「あいつ、結婚するんだって？」
やっぱり何も言わない。
「松本さん、騙されたんだよね？
訴えることもできるんだよ？」
「これ、立派な結婚詐欺だろ。
そんな約束、してたんじゃないの？」
俺の方が憤慨してきて
捲し立てたのにさ。
「いいの。大丈夫。
幸せになってくれるなら、
それでいいの」
そう言うくせに涙がこぼれて
鼻が真っ赤でさ。
俺が真剣に話した事なんて
聞いているんだか聞いていないんだか。
「お願い。黙っていてあげてね」
笠原のことを気遣っててさ。
何か負けたって気がした。
手ひどく振った男を守る強さと
それをアピールしない慎ましさにも驚いた。
何も言えなくなった俺は、
そっと教室を出るしかなかった。
「分かんねえ女だな」
悔し紛れに呟いた独り言は
やたらガキで自分でも恥ずかしかった。
“ちゃんと恋愛してないな、君”
奴のしたり顔が浮かぶ。くそ。
他の誰にも見せない顔をさせるってことか。
何だ、この敗北感は。
胸の中に重い石が沈んで行く感覚。
俺の彼女はあんな顔するか？
しないな。賭けてもいい。ない。
いい女なんだろうな、松本A。
その日から、
松本Aは、さらに特別な存在になった。
いつも気になる。
恋愛じゃないけどな。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1136人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
おはな(プロフ) - ちづるさん» ちづるさん、幸せをお届けできて嬉しいです。良かった。実は一途だった男を許してやってください。お返事が遅くなってしまって申し訳ありません。でもコメントはしっかり読んでいました。褒めてくださって感謝しています。ありがとうございました。また会えますように。 (2018年1月31日 21時) (
レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - メイさん» メイさん、完結まで見守って頂きありがとうございました。幸せな結末、溺愛デレ笑顔、ご堪能いただけたでしょうか。とは言え、お返事が遅くなってしまってごめんなさい。暫しお休みして次に向かおうと思います。その際は是非お越しくださいませ。 (2018年1月31日 21時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - ゆきままさん» ゆきままさん、お返事、遅くなってしまってごめんなさい。溺愛兄を絶対潤くんで書きたかったんです。デレた笑顔が可愛すぎて。で、ふたりでおでん食べてビール飲んでもらいました。満足です。折に触れコメントを頂きありがとうございました。またお会いできますように。 (2018年1月31日 21時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - はるさん» はるさん、お返事が遅くなってしまってごめんなさい。怒涛の企画の後、今はもう力が抜けています。まあ私的には頑張って良かったと思っています。先生方のお話も好んでくださって嬉しい。次の準備も始めています。またお会いできるともっと嬉しいです。 (2018年1月31日 21時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - ともさん» ともさん、このお話の彼は今より少し幼い感じです。１０周年の頃のイメージで書きました。ずっとずっと見てきた彼をお話で形作って皆さんと魅力を語りたい。そんな想いで書いています。お返事が遅くなってしまってすみませんでした。またお会いできるよう願っています。 (2018年1月31日 20時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：おはな
| 作成日時：2018年1月20日 13時
