罪深さ ページ27
エスカレーターから降りる時
翔の手が背中をぽんと軽く叩いた。
背中と腰の間の微妙な位置を。
そういう関係じゃなかったら
立派なセクハラになりそうな位置を。
「行こう。あっちだ」
その声も大好き。
少し強くなった瞳も好き。
翔だって緊張してるじゃないの。
分かるわ。
「Aちゃん！」
先輩が椅子から立ち上がった。
一度翔のネクタイを見た。
見逃さなかった自分を恨む。
「来てくれたのね、ありがとう。
櫻井くんもありがとうね。
お仕事、忙しいでしょうに」
「まあ、誰かさん達のお陰で
彼女とゆっくりする暇もないかな」
「まあ、それは大変だこと」
「自覚がないとは恐れ入ったな」
ふたりの掛け合いは
回転が速くて間が合っていて
過ごした時間の長さを感じさせる。
挫けそうになるけど。
過去は、過去だと押し留める。
「時間がない。
スタンド式のカフェがあったよな」
シミュレーションしたように翔が仕切る。
飲み物を買いに行ってくれている間、
先輩と二人きりになった。
「あの、梓先輩、ごめんなさい。
すみませんでした」
とにかく謝る。
真相はさておき、私は先輩を裏切った。
罪悪感に苛まれて自分が壊れそうだった。
でも翔を諦められなくて。
「私が本命じゃないって分かってても
それでもいいと思ったりしました。
大野係長に言われた通りです。
私は、先輩達の嘘を
責める資格なんてないんです」
頭を下げる。
「とんでもないわ、Aちゃん。
櫻井くんとあなたの仲を
引き裂くようなことをして
本当に申し訳なかった」
先輩の声まで美しい。
この姿、この声、綺麗な仕事ぶり、
全部憧れていた。
これからも、きっと。
「内緒だけど私ね、櫻井くん本人より早く
Aちゃんへの想いに気が付いたと思うの。
櫻井くん、私のことがある前からずっと
Aちゃんを見ていたんじゃないかな。
長年それに気が付かないまま、
随分時間が経っていたと思うのよね」
さらっと凄いことを言う。
梓先輩が私の正面に向き直った。
「だからこそ私の罪は深いの。
嫌な女でしょ？正体はこんなものなの。
一時期、どろどろしてて最悪だった。
櫻井くんと上手くいかなくて当然なのよ」
初めて見る弱い微笑み。
ああ、この人も血の通う女なんだ。
何よりも自分の恋が大切で
そのためなら何だって出来ちゃうような。
私と同じなんだって実感する。
だけど。
先輩の気持ちは分かるけど
分かっちゃいけないと思って。
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おはな(プロフ) - nanaさん» ばれちゃいました！nanaさん、さすがです！次の章で係長再登場です。颯爽とコートを翻して歩く姿を妄想しました。そして男櫻井の今後ですね。内側でしっかり企む男ですからね、どうでしょう。ご期待に応えられるよう、妄想頑張ります！ (2017年12月23日 12時) (
レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - ゆいさん» ゆいさん、すみません、私がサンドイッチ大好きなんです。ついつい書いてしまうんですよね。そういうツボを外さない彼にしたくて、こうなりました。色々あっても揺るがずに幸せでいましょうね。 (2017年12月23日 12時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
nana(プロフ) - まさかまさかまさかのマサくるーーー！？あれでFOなんておはなさん殺生な…と思ってたんです実は(笑)もし勘違いだったら私はどうしたら…(知らんがな)しかし結婚前の同棲の是非はカップルによりけりなので、一概には言えないぜ兄潤よ。今後の男櫻井の動向に期待します！ (2017年12月22日 23時) (携帯から) (レス) id: 432d7a35b8 (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - 前に先輩と買って来てくれたサンドイッチですよね？覚えていたなんて、流石な男です！そういうの嬉しいなあ。で、隣に座って仕事するとか最高です。幸せ過ぎて、ネットで流れる事なんてどーでもいい！ (2017年12月21日 10時) (レス) id: 57325286d2 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - keiさん» keiさん、彼の想いを正確に読み取って頂けて嬉しい！一つ一つの行動に言葉に、意味を込めるところを書きたかったので。ちゃんと見て考えてくれる彼の愛情を、この後も書いていこうと思います。またお越しくださいね。 (2017年12月21日 8時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おはな
| 作成日時：2017年11月25日 12時
