ガラス窓 ページ38
「あ、出先からですか？」
ビジネスバックを抱えて、
資料の入った紙袋も持っている。
「うん、そう。ここまで戻ってきたらさ、
折り畳み傘出すのって面倒じゃない？
入れてってくれる？」
「いいですけど。
可愛い女子社員に勘違いされますよ」
「あれ？この間、言ったよね。
僕は勘違いされても否定しないって」
うん？噂には関知しないってことかな。
「そうでしたっけ」
と、言いながら、ふと見たカフェに
雨を避けるように入って行った二人。
つい目で追ってしまった。
すぐに後悔する。
真っ直ぐ前を見ていればよかった。
そもそもコンビニにしておけばよかった。
どうしてこんな場面に出くわしてしまうのか。
何の準備もないままに。
それは、櫻井と梓先輩で。
カフェの入り口近く、
梓先輩が櫻井の袖を濡らした雨粒を
ハンカチでさっと払ってあげている。
櫻井は両腕を差し出すようにしていて
何だろう、“ありがと”かな、
“悪い、悪い”かな、そんな感じで
何か言ってる。
いつ見てもお似合いだなあ。
ガラスの向こう、そこだけライトが当っているような。
気付けば梓先輩の細い手首に揺れている、
あのブレスレットをぼーっと見ていた。
立ち止まった私。
歩いていた坂本係長が傘から出てしまって
雨に当って気付いたのか、戻って来て。
私の視線の先を見た。
「ああ、そうか」
それだけ言って。
傘を奪って私の肩を抱いて、
あろうことかカフェに向かって行く。
コンコンとガラス窓を叩いた。
驚くように私達を見た櫻井と梓先輩。
「係長、誤解されますって」
固い表情のまま言ったら
「誤解させとけば？
あるいは誤解でなくなれば良いんじゃない？」
淡々と返ってきた言葉の意味は、
もうどうでも良かった。
梓先輩が笑顔で小さく手を振っている。
櫻井は、何だか目を丸くしていて
私を見ているような、見てもいないような。
関心、ないよね。
小さくお辞儀をして、また会社への道に戻る。
肩に乗る坂本係長の手を避けなかった私。
とっさに、こんな事でも積み重なれば
意思表示になるだろうと思って。
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おはな(プロフ) - しのさん» そうですね、思わせぶりな男です。想いを口に出さないくせに触れるだけ触れるという勝手なズルい男、たまりませんね。すみません。モヤモヤを堪能しながら、次回につなげていきますね。毎回コメントをくださって、ありがとうございます。とっても嬉しいです。 (2017年9月3日 13時) (
レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - mogmog5さん» mogmog5さん、本当にどうしま翔！乱れる想いと気まぐれな彼とで大混乱です。あれこれモヤモヤして考えて、楽しんじゃってくださいませ。そして先生方の方までお越し頂いて、ありがとうございます。とっても励みになります。 (2017年9月3日 13時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - メイさん» メイさん、想像して頂いてますね、ありがとうございます。二宮くん、ちらちらと気になる存在ですよね。濡れた瞳でどう絡んでくるんでしょうね。ひやひやしますが。妄想、憶測、想像、如何ようにもお楽しみくださいませ。そして教えてくださいね。 (2017年9月3日 13時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - sallysally67さん» sallysally67さん、いつもコメントをありがとうございます。想い乱れる彼女の苦しさ、健気さ、伝わっているようで良かったです。「ひとり勝手に流れを作って」ますよね、彼女。私も、もやもやヒリヒリしております。お付き合い頂けますように。 (2017年9月3日 13時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
おはな(プロフ) - ゆいさん» わあ、ゆいさん、ごめんなさい。悶々として頂こうと思って書いた今回の更新分です。彼の気持ちが分かりませんよね。大学生時代からの関係の中で、どんな風に彼女のことを想ってきたのかな。私も想像しながら次回も頑張ってみます。ありがとうございました。 (2017年9月3日 13時) (レス) id: 4a84da09b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おはな
| 作成日時：2017年7月29日 10時
