夕焼け ページ43
コンサートが終わって、
狭い通路を降りて行くうちに、
出口に向かう人の波に飲まれそうになる。
先生が
「どこに行くの。」
って、笑いながら私の肩を引き寄せた。
驚いて、ひゅっと息を飲む。
今までで一番近い距離に先生の顔があって、
体温まで感じて、足に力が入らない。
そのまま肩を抱かれて外に出た。
離される。寒い。
小さく震えると
「寒いの？」
って、優しい声がする。
「じゃ、どこか入ろうか。」
もう一度、肩を抱かれた。
金魚みたいな呼吸になる。
「そんなに寒いの？」
「いえ、大丈夫です。」
「我慢しないで。」
耳元でそんな言葉を言われて、
あまりの刺激に涙が上がってくる。
雨は止んでいた。
遠くの空に、造り物の様な夕焼け。
紫から段々にオレンジになっている。
「夕焼け。」
って、声に出たら
「うん、綺麗だね。」
耳の近くで先生の声。
ホテルのラウンジで紅茶をオーダーする。
「ね、好きな曲あった？」
「僕は、ピアノの曲が好きでね。」
「今日は、弦が強めだったの気付いた？」
先生が饒舌。
「私は、ホルンの音が好きで、」
「やっぱり古典的な曲が良いです。」
「複雑な構成は、難しくて。」
夢の様な時間。
先生のお陰で構えることなく
お話しできてる。楽しい。
「夕飯も一緒にどう？
こんな綺麗なお嬢さんと食事できたらいいなと思ってさ。」
「いつものザ・研修医って感じの君もいいけど、
こうしてきちんとした格好、すごく似合ってる。
ずっと見ていたくなるよ。」
なんて。心地良い言葉が次々と。
「先生、お上手ですね。」
気の効いたことが言えなくて。
「研修医の君は素直だけど、
プライベートの君は素直じゃないんだな。発見。」
くすくすと笑ってる。
余裕を見せつけられてるのが分かるのに。
君って呼ばれることに慣れてなくて、
自分のことだと思えなくてうろたえてしまう。
「時々、挙動不審になるよね。面白い。」
「男心をくすぐるんだろうな。天然？」
「普段、しっかりしてるから余計に可愛いね。」
からかわれ続けて、
どうしたら良いのか分からない。
「もう、勘弁してください。
紅茶の味が分からなくなります。」
睨んでみた。やっぱり笑ってる。
「笑わないでください。」
「無理でしょう、楽しいんだから。あははは。」
「もう。」
「実はね、ご飯のお店、予約してあってね。
何とか君を帰さないようにって、頑張ってたんだよ。」
うそ。うそでしょう。先生が私を？
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智美(プロフ) - 最初の方のページはほとんど(私の姓)や(私の名)というふうになっていて読みにくいです。修正お願いしますm(_ _)mm(_ _)m (2019年2月10日 14時) (
レス) id: b9bab58b14 (このIDを非表示/違反報告)
きゅうり(プロフ) - ところどころお名前が唯になっています(;o;) (2017年7月3日 11時) (レス) id: 30427f3e19 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おはな
| 作成日時：2016年6月7日 14時
