低く響く声 ページ35
お蕎麦屋さんから一週間以上が経った。
１１月に入って、櫻井先生との接点は全くない。
食堂で見かけても、遠くの方。
挨拶もできない。食べてる物も見えない。
そして結構な頻度で美宝さんが隣にいる。
心を強く持つ。つまらない感情に負けない。
久しぶりに会った今井くんと食べている。
何となく気まずい。以前より会話が少ない。
どう見ても好青年で将来有望で
イケメンなんだから、
立ち止まってないで、
自分の為だけの人を見つけて欲しい。
心からそう思っている。友人として。
伝わらないだろうけど。
「ね、A、気にし過ぎ。」
とか、言われても。
「気にしないなんて、無理。」
「無理って、何？」
「だって、無理は無理。」
「頑固だな。」
「気にしないで済むような告白だったら
しなければ良かったでしょう。」
「ほんと、頑固だな。」
「どっちが。」
どちらからともなく、笑い出す。
「ちょっとさあ、可笑しくなってきた。
馬鹿でしょ、これ。」
「シリアスは無理だってことでしょうね、私達。」
ふと、櫻井先生がこっちを見た気がした。
気のせい。きっと。
「櫻井先生さ、シカゴの学会で発表するんだって。
その準備で大変らしいよ。想像できない世界だね。」
「え？いつ？」
「来週かな。気になる？」
「気に、なる。」
ふふって笑った今井くん。
それ以上の情報は知らないよって。
食器を下げに行くと、先生がいた。
美宝さんはいない。
思い切って話しかける。後輩として。
「櫻井先生、シカゴの学会で発表されるんですね。
私には想像できない世界です。」
ちょっと今井くんのパクリ。
より後輩らしくなったはず。
「そんなことないよ。
A先生だって、何年かしたらきっとチャンスあるって。」
「わあ、先生に言って頂けるとそんな気になります。
発表が上手くいくよう、祈ってますね。」
どうしよう、お話できて嬉しい。
すると、耳元に近づいてきた先生が小さな声で、
「コンサート、忘れるなよ。」
って、低く、鼓膜に直接響かせるように言った。
気のせいじゃない。
胸にまで轟かせて、
すっと離れて行った。
何が起こったのか分からない。
もう先生は出口に向かっている。
食器を下げた後で良かった。
きっとトレイごと落としてしまう。
初めてのこの破壊力。ああもう、本当に。
どんどん好きになってしまう。
後輩としてなんて無理。
どうしたら良いんだろう。
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智美(プロフ) - 最初の方のページはほとんど(私の姓)や(私の名)というふうになっていて読みにくいです。修正お願いしますm(_ _)mm(_ _)m (2019年2月10日 14時) (
レス) id: b9bab58b14 (このIDを非表示/違反報告)
きゅうり(プロフ) - ところどころお名前が唯になっています(;o;) (2017年7月3日 11時) (レス) id: 30427f3e19 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おはな
| 作成日時：2016年6月7日 14時
