私の武器 ページ31
雅紀さんに会って、
また過去の恋愛が顔を出す。
違う、私はもう
「綺麗事ばかりのお嬢様」なんかじゃない。
小椋先生の上品な女性らしさとか
美宝さんの行動力と色っぽさとか
若いナースたちの色香とか
やけに櫻井先生のことを分かってる東西主任の存在だって。
雅紀さんが言うように櫻井先生は、
女性を引き付け過ぎる。
先生に罪はないけど。
十人並の容姿で、スレンダーではなくて、
褒められるのは真面目さだけで。
恋が苦手で怖がりな、
何の魅力もない私には。
「想いの強さ」しか武器は、ない。
うん、自分から取りに行く。
この想いの強さが、私の強さ。
これだけ落ち込んでも惨めでも辛くても、
あきらめようって気持ちになれない。
それどころか、どんどん好きになっている。
計算できるほど恋愛偏差値は高くないんだから、
当たり前に普通のことをやるしかないと思う。
昨日の夜、メールとＬＩＮＥのＩＤと携帯番号を
小さなカードに丁寧に書いた。
メモ帳の内ポケットに忍ばせる。
渡せるタイミングがきたら、躊躇なく渡す。
なりふり構わず。
馬鹿みたいに鏡の前で練習した。
「コンサートの詳細、教えてくださいね。」
と、セリフまで考えた。
おかしい位に思いつめているのは分かっているけど、
弱気に打ち勝つには、
必要だと自分に言い聞かせて。
翌日、お昼を済ませて医局に戻った。
櫻井先生がエレベーターの前に一人でいる。
美宝さんはいない。チャンス。
カードを出して、ポケットに忍ばせる。
「櫻井先生、こんにちは。」
いかにも、空々しい。
「お、A先生、頑張ってる？」
「はい。あ、先生、
あの、コンサート、楽しみにしているのですが、
本当に私がご一緒してもいいのでしょうか。」
「もちろん。誘ったのは、僕の方でしょ。」
「では、先生。詳細を教えてくださいね。
これ、私のプライベートの連絡先です。」
渡せた。自然だったかな。
先生の切り揃えられた爪と長い指に目が釘付け。
恥ずかしいし、怖いし、
先生の表情を見ることができない。
「ああ、ありがとう。
用意してくれたんだ。ごめんね。」
ちょっと微笑んだ先生が受取って、
手帳に挟んだのを確認。
「えっと、僕の方からメッセージ送るね。
確認しといて。じゃあ。」
エレベーターが来て、乗って行った先生。
嫌そうな表情ではなかったけど。
力が抜ける。
受け取ってもらえたと喜んでいいのか、
まだ分からない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1639人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
智美(プロフ) - 最初の方のページはほとんど(私の姓)や(私の名)というふうになっていて読みにくいです。修正お願いしますm(_ _)mm(_ _)m (2019年2月10日 14時) (
レス) id: b9bab58b14 (このIDを非表示/違反報告)
きゅうり(プロフ) - ところどころお名前が唯になっています(;o;) (2017年7月3日 11時) (レス) id: 30427f3e19 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：おはな
| 作成日時：2016年6月7日 14時
