女の実力 ページ26
バーベキューの日、
たまたま二人でコンサートに行くことが決まった日、
あの日から５日が経った。
櫻井先生に全く会えていない。
偶然を待っているだけの５日間。
夢だったのかな。
金曜日だから、他の平日より
ゆっくりしっかり教えてもらえる日。
ＣＴの所見について、レクチャーを受ける。
断片的な知識が繋がって、診断に結びつく。
そうすると治療方針が整っていく。
クリアすべき問題が整理できて、
計画が立っていく。
内科の醍醐味だと思う。
先生方も活き活きしている。
全て終わって１９時過ぎ。
ここからが私の勉強の時間になる。
さっき教えて頂いたことを基に、
患者さん一人一人のカルテを開く。
自分の考えが間違っていないことを確認して。
さらに必要な知識を整理する。
一通り終えると２２時を過ぎていた。
お腹が空いた。
夕方にチョコを一片食べただけだった。
病院を出て自宅とは反対の方向にある、
お弁当屋さんに向かうことにする。
２４時間営業で助かった。
お弁当屋さんを出た所で、
前方にタクシーを止める二人に目が止まる。
女性が男性の腕にしがみついて、
目を閉じている。
キスの瞬間？
男性が女性の額を軽く叩いた。
どうして見えてしまったんだろう。
その二人・・・、
美宝さんと櫻井先生。
タクシーが来て、止まって、二人で乗った。
笑い合いながら。
私の手には、生姜焼き弁当とプリン。
目の前をタクシーが通り過ぎる。
櫻井先生と目が合った気がした。
私の負けだ。
スタートラインに届かないまま。
自転車を飛ばして帰る。
泣いてない。泣いてない。
私は、泣いて、いない。
スタートラインに立ってもいないんだから
泣ける訳がない。
部屋に入った途端、座り込んで食べる。
櫻井先生、あれからプリンは、
私にとってラッキーアイテムなんです。
先生のせいなのに。
何も始まっていないのに、
何故こんなに苦しく惨めなんだろうか。
心が粉々に砕けて、
欠片の一つ一つを潰されていく。
一つ残さず。
タクシーから私を見た先生の眼が。
少し驚いていた。忘れられない。
「まずい」って顔。
「見られた」って顔。
私、半年も同じ科にいて、
二人で食事に行ったことなんて一度もなかった。
女としての実力の差を見せつけられた気がする。
プリンも生姜焼きも何の味もしない。
ただ、胸に詰まっていくだけ。
「苦しい。」
声に出た。
私は負けたんだ。
これからも、想う分だけ、負け続けるんだ。
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智美(プロフ) - 最初の方のページはほとんど(私の姓)や(私の名)というふうになっていて読みにくいです。修正お願いしますm(_ _)mm(_ _)m (2019年2月10日 14時) (
レス) id: b9bab58b14 (このIDを非表示/違反報告)
きゅうり(プロフ) - ところどころお名前が唯になっています(;o;) (2017年7月3日 11時) (レス) id: 30427f3e19 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おはな
| 作成日時：2016年6月7日 14時
