蜜蜂と花《青》 (ページ7)

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杏｢A、ほんまにごめんね！｣

『全然ええよ』

杏｢この埋め合わせはまた今度するから！｣

顔の前に手を合わせてこの通りと言わんばかりに謝ってくる

『おん、はよ行き？あっくん待っとるんとちゃうん？』

杏｢あっ！｣

時計を凝視したものの数分後、私に満面の笑みを向けてぶんぶんと手を振るあんちゃん

そんな彼女に、私も軽く手を振り返す

本当は今日２人でカラオケに行く予定だったのだが、お昼に突然

杏｢あっくんから話あるって言われたんやけど｣

今にも泣き出しそうな彼女は、私との約束なんて其方退けで、あっくんに'わかった'と返信を打っていた

きっと明日は彼女の話を放課後まで聞かなくてはいけないのだろう

あっくんと、よりを戻すつもりなのだろうから

あっくんは、藤井くんにあんちゃんを取られても尚一途に思い続けてるんだ

すごいな

なんて尊敬の念を抱いた

すっかり暇になってしまった私は、鞄を持ち、歩みを進めた

十数段ある階段を上り、思い扉を開ける

屋上なんて、始めてきた

鞄を適当に雑に放り投げ、奥の方まで行く

野球部の活きのいい掛け声や、テニス部のラケットの音、吹奏楽部の演奏の音など、ここではいろんなものが一変に聞こえてくる

ｻﾜｻﾜと吹く春風が心地良い

そんな中、私の口からは溜息が一つ

そして

『疲れる』

黒い塊が、零れだした

毎朝毎朝課題見せてと言ってくる人

トイレ行こうって、一人じゃトイレも行けない人

毎日ニコニコ笑って

『ええよ！』

なんて言ってるけど、正直なところ

うざったい

そう思ってる

Aちゃん可愛ええな～、頭ええな～、って言ってくれるのはとても嬉しいのだけれど

正直どんな返しをすれば妥当なのかもわからない

虫のように花の周りに集まって、でもその花が枯れたら最後

もう用はないとでも言うように、皆散っていくのだろう

『いい子ちゃんぶるのは、もう疲れた…』

周りの喧騒に紛れて、そう呟いた

とその時

ふわ～っと風に乗って香るこの匂い

私の大嫌いな匂い

その匂いの元を辿っていくと

そこに居たのは

"彼奴"だった