蜜蜂と花《青》 (ページ29)

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親がいない

君の秘密を、また一つ知ってしまった

部屋のベッドの上に寝転がって今日の流星のあの切なげな表情を思い出す

今にも崩れてしまいそうな、あの表情

儚くて、壊れてしまいそうな

きっと、母親に会いたいはずだ

いくら縁を切られたからといっても、生みの親であることには変わりはない

今度どこかのタイミングで言ってみよう

お母さんに、会いに行ってみたらと

余計なお世話かもしれない
嫌だって拒絶されるかもしれない
でも、それでも会いに行くべきだと思う

だって

もしも私が彼の立場なら

そうするから

ｺﾝｺﾝ

部屋をノックする音が聞こえる

『はーい』

私が返事をすると、ｶﾞﾁｬｯと音を立てて扉が開いた

母｢Aちゃん明日体育祭よね？｣

『うん、それがどうかしたん？』

少しもじもじとしながら

母｢行きたいなって思ってん｣

私は喉のすぐそこまで上がってきていた"来ないで"という言葉を飲み込んだ

だって

母｢お願い｣

そうやってお願いされたら、断るわけにはいかない

『…うん』

私がそう答えると、目をキラキラさせながら"ええの？ほんまに？"としつこいくらいに顔を近づけて嬉しそうにしていた

去年は断れたのにな

断れなかったのはきっと、彼に"羨ましい"

そう言われたからに違いない

母｢ほんなら、お弁当の下拵えしてくるわね｣

まるで小さな子供のように満面の笑みを浮かべながら、部屋を出ていった

そんなお母さんを少しばかり可愛いと思ってみたり

明日の体育祭に備えて、私もいつもより早めに眠りについた