蜜蜂と花《青》 (ページ27)

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無言で手を繋がれたまま歩くこと数十分

一体どこへ行くというのだろうか

先程から住宅地をうろうろとしている

『あの～』

堪らなくなって声を掛けると

藤｢ねぇ｣

それに被せるようにして彼の声が重なった

『なに？』

藤｢家どこ｣

…

『…え』

思わず足を止めてしまい、流星もおっとと言って私の手を繋いだままこちらに振り返った

素っ頓狂な顔をしているであろう私に対して、ﾌｯと笑った

藤｢なんちゅう顔してんねん｣

『いや、あの
どっか行くとこあるんじゃなかったん？』

藤｢え、なんで？｣

『なんでって、ちょっと付き合うてほしいとこあんねんって言うたやん』

全く、自分が言ったことも忘れてしまうほどなのか？

藤｢うん、やからAん家まで送ろう思うてん｣

流星ごめんなさい

君の言ってることはさっぱり理解出来ません

『なに言うてんの
やったら最初からそう言えばよかったやろ』

はぁと溜息を一つ

藤｢やって、そうしたらあの幼馴染みもいっしょでええやろってなりそうやったから｣

頬をぷくっと膨らませながらそう呟いた

藤｢Aと幼馴染みの重岡ってやつ、家隣なんやろ？｣

その質問に、私は驚いて目を丸くしてしまった

『なんで知ってるん』

藤｢聞いた｣

『誰から』

藤｢女の子と男の子｣

『いやわからへん』

藤｢あ、ごめん正確に言うと話してるん聞いた｣

『なんて？』

藤｢家隣なんやって～って言いよるんを盗み聞きみたいな｣

流星、貴方こそ悪い趣味をしているのではないですか？

繋がれた手はそのままに

私はその手をｸﾞｲｯと引っ張った

一気に距離が縮まる

藤｢なんや、随分積極的やな｣

ﾆﾔｯと笑うその顔に私は言ってやった

『私ん家、真逆やで』

その言葉に流星はあ、まじか～とゆるゆるな返事を返した

踵を返して今度は私が彼の手を引く形に

ふと振り返ると

藤｢…｣

無言でそっぽを向いて歩く流星の耳が、ほんのり赤く色づいて見えたのは、夕焼けのせいということにしておこう