蜜蜂と花《青》 (ページ3)

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毎日毎日同じことの繰り返し

朝起きて、制服に袖を通して、学校へ行って、授業を受けて、バイトをして家路につく

特別なことは何も無い

母｢Aちゃん、はいこれお弁当｣

玄関で正靴を履きながら

『ありがとう』

そう言って受け取る

父｢Aちゃん、気を付けてな｣

『うん』

私の父と母は、優しい

私のことを、一番に考えてくれる

悩みがあったら相談に乗ってくれる

当たり前のことなのかもしれないけれど、私にはそれがとても特別なことのように思っていた

今まで叱られた事等、無いのではないだろうか

比較的私は成績はいい方だし、悪い人達とつるんだりなんかもしていない

門限は無いから、帰りが遅くなっても

おかえり

そう言われるだけで怒られたことは無い

そんな２人に、一つだけ蟠りがある

それは、私のことを"Aちゃん"と呼ぶことだ

名前に必ず"ちゃん"を付ける

中学の時に、一度だけ聞いたことがある

体育祭の時に他の子が親に呼び捨てで呼ばれているのを見て

私のことを、なんで"ちゃん"付けで呼ぶん？と

大切にしているからやで

父と母はその質問に対して、口を揃えてそう答えたんだ

その答えに、一度は納得したものの

私の胸の内には、まだ蟠りが残っていた

別に"ちゃん"付けが嫌なわけではない

ただ、一度は呼び捨てで呼んで欲しいなと、そう思っただけ

何処か、距離感を感じるから

『いってきます』

笑顔で手を振る２人に向かって、私も精一杯の笑顔を作って家を出た

いつも通りの道を、何の気なしに歩く

高校２年生が始まって、まだ一週間ほど

だから季節はまだ、春のままで

ﾋﾞｭｳｯ

と春風が私のミディアムの髪や制服を揺らす

その時、ふと右下の花に目を向けると

『蜜蜂だ…』

蜜蜂が、花の蜜を吸っていた

私が見ていることになんて気付かずに

自分の欲を満たしている

蜂は、人を刺したら死ぬらしい

だから蜂だって、刺したくて刺しているのではないと思う

彼らは、自分達に攻撃を仕掛けてくるものに対して、自らを守る防御として、刺してくるのだ

刺されたくなければ、危害を与えなければいい

ただそれだけ

でも世の中には好奇心旺盛な人だっている

そういう人が、彼らの巣や彼ら自身に危害を与え、結果的に痛い目に遭う

私はそんな蜜蜂の生き方が、嫌いではない