蜜蜂と花《青》 (ページ20)

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藤｢覗きなんて、悪い趣味しとるんやね｣

『やめてよ、変な言い方せんといて』

にやにやしながらこちらを見る彼に向かって吐き捨てた

『あんな場所でしとるん、誰だって嫌でも目に入るやろ』

キスなんて

普通人前でしないだろう

見せつけてるのか？

それこそ趣味が悪い

椅子に座って長い脚を目一杯伸ばしている藤井流星をｷｯと睨みつける

藤｢てかAさ、俺んことなんて呼んでるん？｣

『はっ』

突然の質問に掠れた声が出る

藤｢俺はAって読んでる
Aは？｣

面倒くさい

『藤井流星やけど』

藤｢えーなんやそれフルネームやん｣

頬を少し膨らませながら

藤｢流星って呼んでや｣

もうこの際、どうでもいい

彼の望み通りにしてやろう

『わかった』

その答えに子供のように無邪気な笑顔を見せて喜んでいる

そんな彼を見ながら

『私からも、一個質問してもええ？』

ずっと気になっていた疑問をぶつけようと思う

藤｢？ええけど？｣

キョトン顔の彼に向かって

『本気の恋、したことあるん？』

どうやらこの質問は、彼にとっては爆弾になってしまったようだ

興味本意で聞いたこの質問に、彼は表情を曇らせる

藤｢なんでそんなこと聞くん？｣

構うものか

こんなのにいちいち動揺していては埒が明かない

『ただの興味本意』

そう

ただのね

藤｢…わからへん｣

『はぁ？』

彼のその答えに、私は理解ができなかった

"わからへん"

まさかそう返ってくるとは思わなかったから

『意味がわからんのやけど』

ちゃんと、わかるように説明してほしい

そんな願いを込めて呟いた

するとそれに答えるように、口を開いた

藤｢俺は愛を知らへんから｣