蜜蜂と花《青》 (ページ16)

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子供でも大人でもそうなのだろうけど

｢あ、Aちゃん！｣

｢昨日藤井くんと放課後２人でおったんやって！？｣

噂は人を伝って伝って、すぐに回っていく

面白い噂は、誰も口に止めずにﾎﾟﾛﾎﾟﾛと零していく

聞いたことをまるで工場の商品のように次から次へと回していく

いい話でも、悪い話でも

面白いと思えばどんどん垂れ流していく

人間ってのはそういう生き物

教室に入るなり、"花"を取り囲む"虫"達は

更に美味しい蜜を求めてやって来る

その事を誰に聞いたのか、そんなことはもうどうでもよかった

『うん、おったで』

嘘なんて、つく必要はない

｢えー！遂に藤井くん、Aちゃんにいったんや～｣

｢美男美女でお似合いやんか～｣

"お似合い"

私はその言葉に引っかかった

私は別に、彼のことを好きでもなんともないし、彼だって人を本気で好きにならないのは皆も知っていることだろう

｢おいしげ～、お前幼馴染み藤井に取られてええんかー？｣

男子が茶化しながら大毅の肩を組む

それに困ったように笑う彼

その笑顔が何処と無く不自然に見えたのは、気の所為だろうか

と、その時

｢三島Aっておる？｣

教室の前から私を呼ぶ声が聞こえた

私と目が合うなり

｢ちょっと、ええかな？｣

人差し指であっちと指図しながらそう言う彼女に、私もなんの抵抗もせずに着いて行った

｢なぁ、あれってもしかして川瀬？｣

｢ちょっと、Aちゃん行かへんでも…｣

『大丈夫やで』

そう告げて、教室を出た

皆がこんなに心配するのには

理由がある