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「そんなに髭面だめだったかなぁ…」
「ダメとかの前に、景光警察官なりたてじゃん」
なんとか間に合った卒業式の後、私と景光は二人で校内を歩いていた。
「あとで全員で集まろう」って話になったけど、伊達は彼女に電話をしに行き、萩原は女子に追いかけ回され、零と松田はその萩原を探しに行った為、仕方なく私達二人で先に集合場所に行く事にしたのだ。
「この半年、早かったね」
「珍しいね。Aがそんな事言うの」
「まあ、今日くらいは良いかなって」
この警察学校から一歩踏み出せば、私は警察官として世に出る事になり、ここ半年間停滞していた復讐の計画も再び始動する。
本格的に動き出したら、思い出や余韻に浸っている余裕はなくなる。
そう思うと、自然に切なくなってしまうものだ。
「無駄に一人で突っ走らないでよ」
「…何、急に」
「Aが思ってる以上に、頼れる人はいるんだから」
「私がその人に頼りたいって思うかは別でしょ」
「じゃあ、何かあったら俺に頼ってよ」
景光らしくない心強い発言に、目の前の光景を疑ってしまう。こんな事を景光言われるのは、きっと出会ってから初めてだと思う。
からかいとして流しても良いけど、復讐の為に利用する事は少なからずある。
それに、最後くらい良いよね。
「分かった。何かあったら頼ってあげるよ」
「何で頼る側なのに上から目線なんだよ。Aらしいけどさ」
「細かい事は気にしなくて良いんだって。…あ、そうだ。それなら約束してもらわないと」
ふと、爽やかに笑う景光の横顔を見て思い立った。
これから警察官になるというのに、こんな約束をするのは無謀だろうか。でも、卒業式の日の約束ってなんか素敵に思えてしまう。
何より、これは私の本心だから。
「私より先に死んだりしないでよ。そしたら、あなたに頼れないじゃん」
「言われなくても死なないよ」
「どうだろうね?」
「…もしかして、俺そんなに信頼されてない?」
「冗談だよ」と少し笑いながら言うと、景光もつられて笑った。
卒業ってだけで、これまでの事全部が青春となってしまうのだから恐ろしい。でも、そんな儚さが結構好きだったりする。変な矛盾だ。
首筋辺りを通る風を感じながら静寂に埋もれる。景光の目が細められたのを見て、私は再度口にした。
「約束だから。絶対、私より先に死なないで」
「…うん。分かったよ」
さっきよりも、念を押して。
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みさ。(プロフ) - この話最高!!応援してます。これからも頑張ってください! (6月19日 18時) (レス) @page30 id: 952cf5eb01 (このIDを非表示/違反報告)
紅蘭(プロフ) - めっちゃ面白いです!更新頑張ってください。応援してます! (6月11日 16時) (レス) @page22 id: d17fdc23ae (このIDを非表示/違反報告)
あ - 推しの子と名探偵コナンのクロスオーバー面白いです! 更新頑張ってください!! (6月6日 1時) (レス) @page18 id: f2f05df21c (このIDを非表示/違反報告)
さふゆわ - 面白いです!更新待ってます!!!! (6月5日 22時) (レス) @page18 id: cde793218e (このIDを非表示/違反報告)
れもねーど - 最近推しの子にハマりました。最高のクロスオーバーですね!更新楽しみにしております!! (5月31日 21時) (レス) @page13 id: e6a1afaa78 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りよ | 作成日時:2023年5月28日 13時