19-開心見誠 ページ34
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就寝時間が迫りつつある頃、私は施設内の電話機に来ていた。
「連絡する」って言ってたのに、忙しかったからずっとするの忘れちゃってた。ミヤコさんに悪い事したなぁ。私のいきなり過ぎる提案にも、始めから賛成してくれたのに。
「Aの好きにしなさい」
高校の卒業式前には、もう警察官になりたい事話したんだっけ。少し考えただけでそう言ってくれたミヤコさんには、ほんとに感謝してる。ここまで来れたのも、ミヤコさんの力があってなんだから。
「(それなのに、連絡を忘れている私はなんて親不孝者なんだろ…)」
自分自身に呆れた笑いをかけながら、前にもらったメモ用紙に書かれている電話番号を押す。
公衆電話…って言うのかな。こういう電話使うの初めてかも。
数回コールがかかった後、聞き慣れた爽やかな声色が鼓膜を震わせた。
「はい。こちら苺プロです」
「ミヤコさん、久しぶり」
「…え、A!?」
びっくりしているミヤコさんの顔が目に浮かぶ。いきなりかけたらダメだっただろうか。今度から事前に確認するべき?
「どうして今まで連絡してこなかったの」とか「警察学校での生活はどう?」とかたくさん質問された。1つひとつに丁寧に答えていきながら、昔話に花を咲かせる。
「そういえば、この前お姉ちゃんに会ったよ」
「…そう。どうだった?」
「多分、元気にしてる。『A頑張って〜!』って応援してるんじゃないかな」
「もちろん、ミヤコさん達の事もね」と付け足した。優しく笑いながら相槌を打ってくれるミヤコさんの声を聞き、無意識に目尻が下がる。
私、幸せ者なんだな。愛してくれる親同然の人がいて、大好きな甥と姪もいて。さらには、何かと気にかけてくれる同期もいる。
本音を言えば、何よりも大切なお姉ちゃんもいて欲しかった。誰よりも応援してくれて、私にとっての人生の教科書とも言えるお姉ちゃん。悔しいけど、この鬱憤は全て奴にぶつけるつもりだ。その為に、私はここにいるんだから。
「…あ、ごめん。そろそろ就寝時間だ」
「やっぱり忙しいのね。これからも頑張りなさい」
「ありがとミヤコさん」
そっと受話器を元に戻し、部屋へと続く廊下に目をやる。足を進めようとしたが、すぐにその動きを止め、目の前にいる同期に向けて言葉を放つ。
「こうして話すのは久しぶりな気がするね、松田」
「…ちょっと聞きてぇことがあってな」
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みさ。(プロフ) - この話最高!!応援してます。これからも頑張ってください! (6月19日 18時) (レス) @page30 id: 952cf5eb01 (このIDを非表示/違反報告)
紅蘭(プロフ) - めっちゃ面白いです!更新頑張ってください。応援してます! (6月11日 16時) (レス) @page22 id: d17fdc23ae (このIDを非表示/違反報告)
あ - 推しの子と名探偵コナンのクロスオーバー面白いです! 更新頑張ってください!! (6月6日 1時) (レス) @page18 id: f2f05df21c (このIDを非表示/違反報告)
さふゆわ - 面白いです!更新待ってます!!!! (6月5日 22時) (レス) @page18 id: cde793218e (このIDを非表示/違反報告)
れもねーど - 最近推しの子にハマりました。最高のクロスオーバーですね!更新楽しみにしております!! (5月31日 21時) (レス) @page13 id: e6a1afaa78 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りよ | 作成日時:2023年5月28日 13時