43-雨の日にもう一度 ページ35
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「最悪…」
誰に言うでもなく反射的にそう口にした。
理由は今も振り続ける雨。
小雨や特別勢いのない雨なら走ったり傘を買ったりして対処できるが、目の前に広がっているのはバケツをひっくり返したような土砂降り。通り雨だろうけど、いきなりの事だったから服も少し濡れてしまった。早く警視庁に戻って着替えたい。やらなきゃいけない仕事もあるのに。
「(…景光に供えた花、枯れちゃうかな)」
景光だけじゃない。萩原も松田も班長のも枯れてしまうだろう。枯れるというより、雨の勢いで折れたり花瓶ごと飛ばされていそうだ。結構奮発して買ったのに残念。
ふと、抽象的な思いが込み上がる。この雨が、私の全てを流し消し去ってくれないだろうかと。
お姉ちゃんを喪った悲しみも、景光へのこの想いも、あいつに対する怒りも。私の自分勝手な一面も全部。
いっそ、あいつへの憎悪を押し殺せば良いのかもしれない。だけど、そうなったら景光がいない苦しみを誰にぶつければ良いのだろう。
自分でも分かってる。あんな事を言ったのは気持ちが追いつかなかったからだって。
お姉ちゃんがいなくなった時は、殺した人物がいたからそいつを憎む事で一時的に悲しみを忘れる事ができた。でも、私は景光がどんなふうに殺されたのか知らない。そもそも殺されたのだろうか。
よく考えれば、十年以上一緒にいた幼なじみなのに私は彼の事を何も知らない気がする。
好きな食べ物は？どんなジャンルの本が好き？遊びに行くなら？…どれも知らない。
知りたい事も、聞きたい事もあり過ぎる。
「景光に会いたい」
声にした言葉は、自分のものとは思えない程弱々しくて情けなかった。
バカみたい。「人は喪ってからその大切さに気付く」ってこういう事か。「お姉ちゃんはずっと前から大切だった」「こんなの戯言だ」なんて言ってきたのに、目の前にあった幸せに気付けなかった。
景光は公安だから彼を知っている人はほとんどいない。誰かにこの思いをぶつける事すらできない。彼を知ってる誰かと話したい。
ふらふらと雨宿りしていたバス停を離れて、行く宛てもなく歩を進める。
警察学校時代にアクアやルビーとは会っていない。二人は彼の事を知らない。話せない。家に呼んだ事なんてなかったからミヤコさんだって同じ。
このまま私と彼の、彼らの物語をなかった事にしたくない。誰か、誰か＿＿＿
「＿＿＿傘、忘れてるぞ」
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ソーダ愛す - 私の望んでいたクロスオーバーが読めるなんて...！更新楽しみにしてます！！ (12月10日 0時) (
レス) id: 73c730aa71 (このIDを非表示/違反報告)
駐車場 - 本当にすごいですなんでこんなの思いつくんですか天才ですか？なんかもう色々と頑張ってほしいです、更新待ってます！ (10月25日 19時) (レス) @page34 id: c9b27d8eb7 (このIDを非表示/違反報告)
さふゆわ - うわぁぁぁ！続きが気になるぅ！ (9月4日 21時) (レス) @page26 id: cde793218e (このIDを非表示/違反報告)
Ama - めっちゃ面白いですー！応援してます。 (8月7日 19時) (レス) @page19 id: 7e4a5b7e94 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りよ | 作成日時：2023年7月14日 19時
