・ ページ8
・
「冴ちゃん…!」
声のした方を見ると、汗を流して走って来ている冴ちゃんがいた。
助けてもらいたくて手をのばすけど、そう簡単にあの男が離してくれるはずない。男は冴ちゃん達に見つかってどうでも良くなったのか、私を抱えてこの場を去ろうと走り出した。
「いやっ、ねぇ離して!」
「うるさい!静かにしてろ!」
性格も同一人物とは思えない程豹変している。力も強くなっている所為で、暴れても男の腕からは逃れられない。
このままじゃほんとに誘拐されちゃう。せっかく、冴ちゃんが助けに来てくれたのに…!
「姉さんから離れろ!」
冴ちゃんの強気な態度に男も少し怖気づく。しかし、それでも私を諦める気はないようで、ワゴン車に向かい続ける。
詰んだ。もうだめでしょこれは。こんなクソ男に誘拐されるのは癪だけど、最後に冴ちゃんの姿を見れて良かったよ。サッカー頑張ってね___
「うわっ!?」
全てを諦めていた時、男が変な声を上げ力が緩む。突然の事に脳が追いつかず、私は抱えられていた腕から落ちていった。
「大丈夫か姉さん!」
「私は大丈夫だけど…」
駆け寄って来た冴ちゃんに安否を伝えながら、視線を男の方にズラす。男は白目を剥き倒れていた。死んでない?大丈夫??
よく見ると、男の横にはサッカーボールが転がっていた。しかもほぼ毎日目にする物と全く同じ。え、という事は…
「これ、冴ちゃんがやったの?」
「そうだけど。それより、本当に大丈夫かよ?立てるか?」
つまり、冴ちゃんが私の為に男に攻撃したって事?
今も尚、私を心配し続ける冴ちゃん。そんな健気さを前に、私は体の奥からふつふつと何かが込み上げてきた。
「バカ!冴ちゃんに何かあったらどうするの!?」
「え…」
突然怒鳴った私に冴ちゃんはとても混乱していた。
だけど、今の私にそれを気にする余裕はない。
「今回は何もなかったから良いけど、もしかしたら冴ちゃんも誘拐されるかもしれないじゃん!」
「…ごめん。でも姉さんの事助けたくて」
冴ちゃんは、自分のした事を理解したのかしゅんと縮こまる。あー、何やってんだろ私。推しにこんな顔させるなんて。
「…でも、私の為に勇気出してくれたのは嬉しかった。ありがと」
「うん」
「言い過ぎてごめんね」
「俺もごめん。次から気を付ける」
2091人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Edisa(プロフ) - 続き見たいです! (4月8日 0時) (レス) @page24 id: 7c18e46756 (このIDを非表示/違反報告)
NONAME(プロフ) - ヤンデレ凛ちゃん最高過ぎる!!更新楽しみに待ってます! (12月5日 20時) (レス) @page23 id: 2ae7d2d5c3 (このIDを非表示/違反報告)
まったり団子 - ヤンデレ!いい!私もヤンデレ系書こうと思ってるので参考にさせてもらえると嬉しいです! (12月1日 20時) (レス) id: f793216af5 (このIDを非表示/違反報告)
雪女 - 更新楽しみにしてます(●︎´▽︎`●︎) (7月19日 13時) (レス) id: 6c1d2855e5 (このIDを非表示/違反報告)
マシュ(プロフ) - 久しぶりの更新嬉しいです!!大好きな作品なのでずっと待ってます!!無理しない程度に頑張って下さい! (2023年4月23日 21時) (レス) id: 94c7c88031 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:りよ | 作成日時:2023年3月27日 16時