見るに堪えない月ですね【中原中也】【文豪ストレイドッグス】

月*二 ページ4

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「また喧嘩したのかえ？」

後ろを振り返ると姐さんが口許に笑みを浮かべ、此方に来た

「A、女は喧嘩などするものじゃないと思うがのう」

「私はポートマフィアの構成員です。喧嘩如きで女だとか気にしてられません」

「そうかのう……然し何時も負けとるのに何故そうも喧嘩を売るんじゃ？」

「それは……」

「＿＿＿＿見るに堪えない月ですね」

彼がそう云ってきたから

綺麗な満月が浮かぶ日に、唐突に告げられた

嫌われている。遠回しに云われた言葉に苛々し、その後は大喧嘩

最初で最後の派手な喧嘩だったと思う

それから関係は最悪になって、口喧嘩許り

「中原さんは私のことが嫌いなんですよ。私も嫌いですが」

そう吐き捨て、彼が去った方向を見る

理由が判らない。嫌われている理由が

何かした心算はなかったのに

「中也はあんなに誰かを傷つけることは云わないと思うがのう」

「私は別なんでしょう。女として見られていないんですよ」

よりにもよって「見るに堪えない月ですね」なんて

とても悲しくて、怒りが溜まって

嗚呼、確か十年前だっただろうか

思い出すほど怒りが込み上げ、舌打ちをした

「A。あまり喧嘩はいけないんじゃぞ？ もう大人じゃから……」

「……はい」

そう、もう大人だ

十年もこの仲は続いた

これからも続き、死ぬ迄この関係は続くのだろう

会う度に睨み、罵倒し、呪いあう関係が

少しだけ寂しい気がした

いや、仲直りなんて望まない

彼から云ってきたのだから

私は被害者だ

あの時何れほど悲しんだのか彼奴は知らないんだ

「それじゃあ姐さん、失礼します」

返事を待たずにその場から離れる

全部、全部、中原さんが悪い

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