見るに堪えない月ですね【中原中也】【文豪ストレイドッグス】

月*十七 ページ19

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「中原さん！」

彼を追いかけ数分。彼の人歩くの速すぎる。やっと追い付き息を整えた。

「野上か、なンだよ」

先程月が綺麗ですねと云った人物には見えない。ごく普通の対応をされた。

「あの……見るに堪えない月ですねって……」

「……嗚呼、そういや意味は云ったことなかったな」

照れ臭そうに視線を逸らす彼。矢張り私は意味を勘違いしていたのだろうか。

「……まぁ考えてくれよ。答え合わせはしてやる」

「え、教えてくれないんですか？」

「お前はどう思っていたのか気になるんだよ」

「そりゃ貴方が嫌いですみたいな……いや、考えさせてください」

「そうか、答え合わせは何時でもいいぞ」

彼はそう云ってふわりと微笑んだ。今までと雰囲気が全然違う。人は此処まで変わるのか。

「……見るに堪えない月ですね」

執務室でそう呟き、天井を見上げた。

貴方が嫌いです。ではないだろう。別の意味があるとしたらそれは……

「……愛してるだと月が綺麗ですねと被るし……星が綺麗ですねの意味と被るわけもないわよね……」

考えれば考えるほど判らない。どんな綺麗な月が出ていても中原さんは見るに堪えない月ですねと云っていた。

「…………あ」

若しかしてだ。これは仮定にしか過ぎないし違うかもしれない。けれど此の言葉が正解ではないのか。

見るに堪えない月ですねは＿＿＿＿

「中原さん！！」

私はそう叫び、執務室を出た。

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