【銀魂】カ ミ サ マ

過激物>薬 ページ19

ー総悟サイドー

土方さんの指示により、屯所へと招かれた旦那は、
これでもかと表情を歪め、大きくため息をついた。



「ーーー・・で、何なの。俺ァおたくらみてーに
暇じゃねェの。迷惑料と手間賃は頂くからな」

「今すぐそのムカつくツラやめろ叩っ斬るぞ」


連日続く捜査の影響か、旦那と無駄な喧嘩をする体力はないらしい。過労死への道を順調に進むそいつに
内心ほくそ笑む。・・あとはこの猿さえ何とかなれば
一件落着なのだが。



「旦那ァ、元はと言えばアンタが俺をこの猿女に
売ったことが要因でしょーや。
責任持って野山に還してくだせェ」

「野山！？私は江戸生まれ江戸育ちです！」



やっとこさ服を着直したらしいそいつが、すかさず
ツッコミを入れる。「異議あり！」と腕をピンと
挙げる様子に、まだまだ先は長そうだと
半ば諦めのような気持ちが沸き上がってくる。



「こんなにまっすぐポジティブに生きているのに
薬なんて使用する理由がありません！
ね！？坂田さん言ってやってください！
私は髪を愛し髪に恋する善良な一般市民だと！」

「髪を愛し髪に恋する善良な一般市民なんだと」
「その通りです！ありがとうございます！」

「・・・ハァ、」


どうにも諦めモードに突入したのは俺だけでは
なさそうだ。面倒臭そうにリピートした旦那と、
隈を作った目元を抑える土方さん。両人も同様である

いや、諦めたというか、ーーこの女にはもう関わりたくねェという方が近いのだろうか。



「・・・万事屋、この女は以前からこんな感じか」

「あん？」

「最近になって性格が一変したとか、以前はもっと
おとなしかったとか」

「いや頭はずっとおかしい」
「・・そうか」

「私は正常です！」


「もういい」と一言投げた土方さんは、
ユラユラと方向を変え、取調室を後にした。



「ーーお？やっとご納得いただけましたか！」


満足げに笑みを浮かべた滝沢Aとは対照的に、
不満気な旦那の視線は，残された俺に向けられる。




「・・結局なんで俺は呼ばれたわけ」

「すいやせんね旦那。土方さん、こいつが薬に手を
出してねーかどうか調べるって聞かなかったもんで。
まあ正気でこのハイテンションじゃ、疑われて当然でさァね」

「はあ？」


さらに深まった非難の目に促され，今回の件について
簡単に説明をすれば、旦那はハッ、とひと笑い。



「ーーそもそも、薬ごときでこの歩く過激物が
どうこうなるわきゃねェだろ」




一理ある。薬が負ける。

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