【銀魂】可もなく不可もなく

じゃがいも ページ6

お昼時、アルバイトをしている定食屋さんでは、「いらっしゃいませ！」と掛け声が響き始める。

混む時間帯、とはいっても、そこまで忙しいと
いうわけでもなく、暇というわけでもなく。
ほとんど見知った常連さんであるため、気負いなく
ゆるりゆるりと仕事に勤しめる、それなりに快適な
職場である。





「ーーあ、銀さんいらっしゃい」

「よお」



そんな中、店の扉をくぐったのは、銀さんだった。
その人はこちらに向かって軽く手をあげたあと、
いつものカウンター席へと腰掛ける。

会うのは昨日ぶりだが、彼も店の常連の一人だ。


実は、私が万事屋に依頼をお願いしたのも、
常連である銀さんに、掃除について相談したことが
きっかけだったりする。






「どうだ。依頼料がっぽり稼いでるか」

「私は給料を稼いでるんです」



言い方をよくすれば、とっつきやすく話しやすい。
プライバシーと気遣いはどこかに捨ててきたような
男だけれど、意外と私は、そんなところに好感を
持てたりする。





「いつ来ても暇そうだなこの店は」

「今は程よく忙しいですよ」


「へえ、程よくーー普通にね」

「そう、程よく」



なぜ"程よく"に食いついて来たのかわからないけど
まあいい。冬用に温められたおしぼりを渡した私は

ーーあぁそういえば、と。






「じゃがいも、どうでした？」


「・・・どうでした、とは？」

「味とか」

「え、じゃがいもの？」

「はい」

「じゃがいもの感想？」

「はい」




先日、飢えた万事屋さんに提供したじゃがいもは、
うちの実家で作ったものだ。

還暦を迎えた父は、まだ現役でばりばり農業を
やっているというのだから、少し心配だ。






「・・芋だった」

「なんですかそれ」

「普通にうまかったよ」

「普通に？」



「・・いや何だよ！俺に何を求めてんだお前は！」



感想といったのだ私は。
芋？まあ確かにじゃがいもは芋。まちがいない。

けどそれって感想じゃなくない？
あと、最近若者がよく使う、"普通"に何ちゃらって言葉。どういうこと。普通って何？いいの悪いの？







「ーーー食レポです。しっかり語ってください」

「あのなぁー、」



芋について何語るんだよ、と。
いやいや、少なくとも、何らかの調理法を用いて、
この人はじゃがいもを食べたんじゃないか





「ホクホクしてたとか、他のより甘かったとか
チーズに合うとかいろいろ、」

「あー、あれだ。・・普通だった」



いやだから。

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