【銀魂】可もなく不可もなく

さりげなく ページ38

陽気のいい今日、店の外を蝶が舞うのをぼんやり眺めながら、あくびをかます。

本当に暇だ、この店は。





(ーー銀さん達来たりしないかなぁ)




こんな日は専ら、そんなことを考えてしまう。
自分でもおかしいとは思うのだが、最近、私の脳裏を銀さんの顔がよぎらない日はない。だって、
暇で暇でどうしようもないんだもの。






「また銀さんのこと考えてんの、Aちゃん」

「・・唐突に血迷いごとですか」





自分の店が経営難だというのに、そんなことは
気にしていないらしい店長は、湯飲みの中身を
すすりながら、こちらにちょっかいを出してくる。

清潔を心がけている店内には、
ところどころに観葉植物が設置されており。
それが何だか、店長とはミスマッチだな、と。
どうでもいい逃避。





「結局どうなんだい？」

「どうもなってませんよ。相変わらず万事屋と
依頼人の関係です」

「だめだめ、そんなんじゃあすぐ盗られちまうよ」

「盗られるって、」

「なんだかんだ言って、好きなんじゃないの？」


「・・そりゃ、知り合いとしては好きですけど」




ニヤつきを隠す気はないらしい店長は、
追い討ちをかけるように「そういや」と。




「彼は、あの子達に隠してるだけで、彼女さんとか
いたりするのかね？」


「え？」

「ありえないことじゃないでしょ？銀さんだって
いい歳なんだし」

「そ、そうなんですかね」

「焦って来た？」
「焦ってません」




まあ確かに、ありえないことではない。
これまで、あの人の生活とか赤字続きの万事屋業とかに気を取られて、彼女なんていないものだと
勝手に思っていたけど。・・そうだよ。
神楽ちゃん達に黙ってこっそり愛を育んでいる
可能性だってあるんじゃないか。





「Aちゃんはまだ若いんだしさ、
少しくらい素直になって火傷してみても
いいと思うんだよね，俺は」





店長の格好つけた言い方には笑いしかでないが、







(ーーまあでも、・・少し気になる、かも)




これくらいなら、さりげなく聞いちゃっても
いいのではないか。



ここのところ人に流されやすすぎる自分は
どうにかしたいけど。

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