【銀魂】可もなく不可もなく

血の気マイナス ページ23

ー銀時サイドー




ぼんやりとした意識の中、だんだんと感覚が
鮮明になっていく。
いつも違う匂いや空気に、一瞬場所を見失いかけ、
そうして、あぁ、そういや今はAの家だと
思い出し・・あれ？







(ーーーあれ！？)



咄嗟に跳ね起きる。
今寝てた俺。依頼人の女の家のソファで
眠りこけてた俺。"女の家"で。

一気に血の気が引いていく。
勢いよく振り返った時計は、夜の10時を指しており
血の気はマイナスに食い込んだ。

・・だが見渡しても、部屋主の姿はなく。
静まり返った部屋の中、ひとまず肩を落として。

ーーーそこでふと、






「・・こりゃあ」




床に落ちた、見慣れぬブランケットに気づいた。
女らしいピンクに染められたそれは、明らかに
俺のものじゃない。

ということは、あいつの持ち物だろうが。






「ったく、叩き起こしゃいいもんを」



視線をずらした先では、ラップに水蒸気を浮かべた
皿が二個。サラダとともにキッチンに置かれていた


あいつのことだ。
俺を起こすのは気が引けたんだろう。

この様子じゃ、あっちも飯食ってねーな。






「・・、これだから平凡なんだよ」



普通に良い奴。きっと寝腐る俺を見つけても、
嫌な顔一つしていない。

神楽ならこれ幸いとばかりに俺のぶんまで
平らげているだろうし、新八なら、起こしは
せずとも自分一人だけですぐ飯を済ませて
家に帰っちまうだろう。残酷冷徹な所業でも
やってのければ、そのうちキャラが確立する。




起こすか起こさまいか悩んでいるAの姿が
手に取るように想像できる。



おもわずガシガシと頭をかいた。
ついつい警戒や何やらを忘れて寝息立てちまうほど
俺はどうにも気が緩んでしまうらしい。









，









「ーーーあ、銀さん！起きました？」

「ッ、お前なぁ・・、」




突然、リビングと廊下を仕切る扉が開かれ、
変わらぬノホホンとした平和ヅラをのぞかせたのは
濡れた髪をタオルでかき乱す部屋主だった。
簡易的な浴衣に着替えたそいつは、俺を見て
頬を緩ませた。





「寒くなかったですか？暖房はつけてますけど」

「・・いや、それより、」
「ーーーあ、もしかしてソファ窮屈でした？」

「ちが、」
「さすがに移動させることはできなくて」

「だから違うってェェエ！！」


「じゃあ何ですか」




こんな時間まで遠慮なく寝腐ってた野郎に対して、
悪態の一つもでねェってか。

大ダメージ→←違う素顔

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