【銀魂】闇に酔う悪魔

見えないということ ページ6

ー土方サイドー




過激派攘夷志士。俺たちの追うそいつが、
この女の客である可能性など、ほんの一握りだ。
ーーが、噂くらい耳に入ってくるだろう。


ゆらゆらと揺れるあかりに浮かぶ影。
伸びたり縮んだらを繰り返すそれを眺めて少し。





「大友総二郎。この名前に聞き覚えは」



俺の質問に、一瞬天を泳いだ女の目線。
小さく唸った後、「あぁ」と思い出したように。





「おおともそうじろう・・ーー攘夷志士の男だね」





ビンゴだ。
Aは、大友を知っている。

その顔に嘘はない。静かな空間の中で紫煙をふかし
ながら、女は「そいつがどうかしたのかい」と。




「あんたの客か」

「常連じゃァないけどね。たまに来るんだよ。
大方、いろんな遊女を入れ替えながら
遊んでるんだろうさ」


「・・なるほどな」





どのくらい時間が経ったのだろう。
さっさと聴取を終わらせてトンヅラするつもりが、
どうにも長居してしまっているらしい。




「お兄さんの探し人？」

「まあ、そんなところだ」


「あの男の来店は不定期なんだよ。
いつ来るのかってのは、あいにく私にも測れない」


「そうか」




ゆったりとした空間の中で、こうして客を引きつけるのは、確かに遊女の仕事であるが、ーー俺が、
今こうしてここにいるのは、そんな単純な理由じゃ
ねェんだ。




「お兄さん、あんたがどんな都合でここに来たのか
わからないけど、・・気をつけたほうがいいよ」


「・・・そりゃあ」

「平和な世の中なんだろう。だから裏の人間は
こんな暗い場所でこそこそする必要があるのさ」






ーーー鬱々とした瞳。
伏せられた長い睫毛が、時折それを隠す。

何を見ているでもない。
外のことを聞いちゃいるが、特に興味もなさそうだ





「表には法が存在する。それを嫌い逃げてきた奴らの集まった世界だ。規律もモラルも、ましてや人道も関係ない。好き勝手やる獣なんて、誰も手懐けられやしないんだからね」



はっきりと落ち着いて紡がれていたAの声が、
乱雑になる。まるで投げつけるように
吐き捨てるように。






「なら____、なんであんたはここにいる」





俺の質問に、ピクリと反応して一瞬止まった。






「・・私は、もうここから離れられないのさ。
汚い世界で、汚い男どもの相手をしてきた。
こんな体で、今更外になんていけないよ」




それにね、そう言ってこっちを向いたそいつは、
俺をみて笑う。








「ーーー見えないって、楽なのさ」

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