恐れた感情 ページ24
お兄さんが帰った後の部屋は、いつもひどく静かで苦しくて、歪だ。
「ーーー何が、常連やめても恨まない、だ」
そんな言葉でしか、彼に警告できなかった。
本当は突き放して、2度と来るなと怒鳴り上げるべきだったんだ。でもできなかった。
それどころか、次会うために、私は彼を約束で
縛った。言葉というのは軽いようで、ひどく重い。
あんな律儀でまっすぐなお兄さんには特に。
それをわかった上で、・・私は純粋なふりをした。
遊女のテクニックの一つ。
そう数えてしまうと、あの人と他の客を
ひとまとめにしてしまっているようで嫌だった。
(ーーまさか、私情で使うなんてね)
お酒、プレゼント、遊戯・・、
"次の来店"をやんわりと意識させるには十分だ。
気がつけば、私の口は私の意図する方向とは
逆に向いて走っていた。
「・・突き放すべき、だよね」
もちろん、相手のために。ーー否。
そんなのは、大きな言い訳。逃げ道。
本当は、自分のため。
(ーーーー・・私は、)
彼に惚れている
呼べる名すらも知らない、まだ数度しか顔を合わせていないあの人に、恋をした。
けれどそれは、私の中に光を見せる。
安全だと暗闇でうずくまっていた私は、
彼の光に向かって走り出すだろう。
ーーーそれは、辛くて面倒で、悲しくて。
私がずっとずっと避けてきたものなのだ。
「ッ、どうして、ーー私だったのさ」
あの時、私が他の客を取っていたら?
気分が乗らないと断っていたら?
お兄さんが、別の日に来ていたら?
私とあの人は会わなかった。知らないままでいて
これまで通り生きていた。
滲んできた涙が、目の前を霞ませる。
ツンと鼻の奥が痛くなって、一粒二粒、落ちた雫が
畳を濡らした。
「・・後悔、してるはずなのに、」
あの人のことを考えると、ひどく幸せになる。
笑みがこぼれる。また会えると思うと飛び跳ねたくなる。それは間違いなく恋。苦しいのに幸せで。
一度はまれば抜け出せない沼だ。
ーーー・・私が最も恐れていた感情。
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シュシュ☆☆(プロフ) - ややさん» ありがとうございます!嬉しいですっ!!読んでくださり、感激でいっぱいでございます!がんばります! (2018年2月1日 20時) (レス) id: a89349d530 (このIDを非表示/違反報告)
やや(プロフ) - 凄くいい話ですね尊敬しましたこれからも更新頑張って下さいね!!! (2018年2月1日 19時) (レス) id: 551e634984 (このIDを非表示/違反報告)
シュシュ☆☆(プロフ) - ピピコさん» ありがとうございます!土方さんは、実は優しいんじゃないかな?というのが私の妄想です笑。きっとピンチに助けに来てくれるはずです!あと少し、お付き合いいただけると嬉しいです! (2018年1月14日 10時) (レス) id: a89349d530 (このIDを非表示/違反報告)
シュシュ☆☆(プロフ) - 愛音さん» ありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです!ちょっと土方さんがヘタレになってしまいましたが…最後はきっとビシッと決めてくれるはず…です!頑張ります! (2018年1月14日 10時) (レス) id: a89349d530 (このIDを非表示/違反報告)
シュシュ☆☆(プロフ) - 紫蘭さん» ありがとうございます!何とか一巻完結ということで、どうなるのやら私もわかりませんが、頑張って収めたいと思います!どうぞ楽しんでいただけると光栄です! (2018年1月14日 10時) (レス) id: a89349d530 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:シュシュ☆☆ | 作者ホームページ:
作成日時:2018年1月4日 1時