【銀魂】衝突必須の求愛物語

初めての感情 ページ3

ー神威サイドー



宇宙を旋回する船は、常に変わらない無機質な
音を発している。それに混じる自分の足音は、
昨日も一昨日も聞いたものだった。
昼夜もわからぬこの船内では、寝起きも自由。
かくいう俺も、さっき起床した。

いい加減繰り返される日常にも飽きてくる。
またドカーンとデカイ任務でもこないものか。
例えば、星一つ破壊しかねないほどの。









(ーーーあ、)




そんな退屈な風景を映していた俺の目に、
一人の女の後ろ姿。・・俺の退屈を、唯一
凌げる存在。先ほどと一転、軽くなった足取りで、揺れる黒髪を追った。







「ーーーやぁ、オハヨウA」




名前を呼べば振り返る女、ーーAは、
厚い書物をめいいっぱい腕に抱え、俺の挨拶に
しかめ面で返答してきた。





「これはこれは、戦闘狂の子兎じゃありませんか。おはようございます。・・ーー申し訳ない
ですけれど、近寄らないでくれます？」

「そんなこと言われたら余計近寄りたくなるンだケド？」

「うざいキモイあり得ない」





淡々と言葉を紡ぐ女は、地球の吉原の遊女とは
違い、ニコリともしない。無愛想で無表情。



試しに一歩近づいてみれば、一歩下がられた。
いつもこいつは、俺との間に一定の距離を取る

この半径ウンメートル以内に入ると、これ以上に不機嫌になるのだから、本当に扱いが難しい





「で、他にご用ですか？仕事中なんですけど」




ーーー少し前から、ここ、春雨第七師団の秘書
及び戦略家として就任したA。どうやら、
俺は出会って早々、嫌われてしまったらしく。
それは数ヶ月経った今も解消されることはない






(・・・俺は、逆なンだケドなぁ)








"この女がほしい"


・・こんな感情は初めてだった。

凛とした表情。固く結ばれ、釣り上がることが
ない唇。鋭い目や、艶やかな髪が、ーー全部、
俺だけのものになればいいのに、と。
むしろ、こんな可愛げのないところが、
俺の加虐心を刺激したのかもしれなかった。


ーーー・・つまり俺は、Aに惚れたのだ。






「そりゃ奇遇だネ。俺も今から仕事なんだ。
一緒にいく？」

「はっ、ご冗談を」



俺を蔑むように鳴らされた鼻。
それと同時に、彼女は踵を返した。

かつこつ、と。俺のものとは違う、・・女物の
ハイヒールが響く船内。ーーこの瞬間だけは、
退屈を忘れられる。




「つれないなぁ」



俺はさっき彼女を発見した時と同じように、
しばらくその揺れる髪を眺めていた。

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