【銀魂】桜に詠う

数年間の時 ページ27

「お、前____ 」

「久しぶりだね、ーー銀時」




以前より伸びた綺麗な髪の毛は、
無造作に垂らされ、小さく風に揺れていた。

白い肌の上に乗る端正なパーツは、
数年前より大人びて、笑えば滲む妖艶さ。






「ーーーA」




この状況をかみしめるように名前を呼べば、
嬉しそうに眼を細めるそいつ。


一歩二歩、と遠慮がちに近づいて、・・俺の
眼の前で止まった。





「・・やっと、会えたよ」


「ーーあぁ、」





あの日と同じく、・・桜の中で俺たちは出会う

桜の花は、次の季節へ向けて、確実に
命を散らしていく。







「・・あんなに大きな戦争だったのに、
生きてたんだね」


「はっ、ーーッたりめーだ」





久々に会えば、ぎこちない会話が続けられる。
ポツリポツリと繰り出されるそれは、妙に
心地よく、くすぐったい。







「お前こそ、いまだにしょっ引かれてねーだァ
驚きだな」

「相変わらず失礼な男だねまったく。
・・これでも、今は立派に医者してるんだよ」




腹に残った傷跡を見るたびに、こいつの下手くそな応急処置を思い出す。あの頃から少しは
成長しているのだろうか。







「これまで、街を転々としてた」






どうやら村を出てから、
医者をしながら、街を回っていたらしい。

てんてんと街を彷徨ううちに、江戸に流れ着き
たった今、俺を見つけたのだそうだ。







「まさか、こんな大きな町に住んでるなんて」

「意外か？」


「銀時は、一匹オオカミって感じがするし」

「なんだよそのイメージ」






ひらりひらり。俺たちの上に降り注ぐ花びらが
時たまAの頭に乗っかった。

それを掬い上げれば、照れたように頬を濃くするそいつは、ーー顔は大人になれど、反応も
その美しさも、昔と変わりなかった。






「ね、・・キスしよ」

「っ、ぶふ！？」


「何さその反応は」




いや、前言撤回。
いつからこんなアバズレになったんだこいつは






「突然女がいう事か！？」

「惚れた男に愛情表現求めて何が悪いんだい」





あー、全くこの女は。





(・・・手強い)





ため息ひとつ。俺はAの頬に手を添える。

互いの顔が近づき、ーーやがて、唇が重なった








「ッ、・・んっ、」




小さな吐息と声。遠慮がちに俺の腰に回された
細い腕に、体がピリリとしびれる感覚。

やがて深くなったキスは、ーー数年間の長い時を埋めるように、続くこととなる。

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