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最後のひとひら ページ24

寄り添った体。俺の肩に乗せられた小さな頭。




俺たちはただ、幹に寄りかかり、
ピンクを散らす桜の木を眺めていた。







「ーーー私達って、両想いってやつかい」

「ッ、改めて言ってんじゃねーよ!
恥ずかしい奴だな」


「恥ずかしがることなんて何もないさ」




そう言って、また俺に体を寄せるそいつは、
どこか小動物を思わせる。

クスリと笑った俺を、不思議そうに見上げた
Aを、次はこちらから抱き寄せた。






「・・また、会えるかね」

「さあな」


「運命が試されるときだね」



「んなモンに未来預けられっかよ」

「何さ。現実主義?」




夢がないねー、と笑うAとの別れの時が
近づいてくる。・・また会えるか、か。





「まあ、お互い元気に生きてさえありゃ
どっかで会えるだろうよ」


「・・・そうか。あんたは侍だもんね」




寂しげな声音が風に消える。






「死ぬ気はねーよ」

「そりゃ、敵さん含めて皆そうだろうさ」


「お前もしょっ引かれねーようにな」


「何のことだい?」

「患者殺すなよってこった」

「はー、・・失礼な男だよ全く」





戦争に出向けば、いつ何時命を落とすかわからない。今でさえ、俺にとって安全な時など
1秒たりともねーんだから。

死ねば、2度と会うことはない。



無意識に抱きよせる腕が強くなったのを
感じ取ったのか、ーーAは俺の手に自らの
それを重ねた。






「会えるさ」




きっと、遥か遠くだ。
実際にこいつがいる場所は。

それでも、その声が言う言葉には、力がこもる
確信が宿る。






「んじゃあよ、ーーお前、春になったら詠え」






その綺麗な声で、桜の詩を、詠いあげろ。




その詠声は、必ず俺の元へ届く。
ーーーきっとわかる。


ふわりと微笑んだAの顔を照らす月明かりが、小さくなっていく。

もう時期見え始めるであろう太陽を予感しながら、彼女の顔を見据えた。


・・忘れねーように。









「・・ーーー世の中にたえてさくらのなかりせば春の心はのどけからまし」






凛とした声音を響かせて、俺の腕の中と肩が
軽くなった。




気がつけば、ーーーただの荒野の真ん中に
腰を下ろしていた俺の視界を、


ーーー最後の花びらが、一つ散り落ちた。

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設定タグ:銀魂 , 坂田銀時 , 攘夷時代   
作品ジャンル:アニメ
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シュシュ☆☆(プロフ) - ピピコさん» ありがとうございます!もったいないお言葉です!最後まで目を通してくださり、ありがとうございました! (2017年3月27日 18時) (レス) id: 61b42241f1 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ - とても綺麗なお話ですごく好きです!タイトルも素敵で全体的に私的ドストライクでした!これからも頑張ってください! (2017年3月26日 21時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
シュシュ☆☆(プロフ) - 紫蘭さん» ありがとうございます!しっとりした恋が書きたくて衝動的に作った作品でした!最後まで読んでくださりありがとうございました! (2017年3月2日 0時) (レス) id: 61b42241f1 (このIDを非表示/違反報告)
紫蘭(プロフ) - 完結おめでとうございます!儚い恋もいずれは、叶うんですね!こんな恋もいいなと思いました。次回作、頑張って下さい! (2017年3月1日 19時) (レス) id: 1847792d84 (このIDを非表示/違反報告)
シュシュ☆☆(プロフ) - ミイナさん» いつも応援ありがとうございます!辰馬オチ、絶対いつかは書きたい作品です。完成度はわかりませんが、ネタを探してみます!気長にお待ちいただけると嬉しいです! (2017年3月1日 11時) (レス) id: 61b42241f1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:シュシュ | 作者ホームページ:   
作成日時:2017年2月22日 0時

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