場違いな ページ3
ーー声をたどっていた俺は、・・暗闇の中
ふと頬を撫でるものがあった。
不思議と、嫌な感じはしなかった。
手で拭えば、頬を撫でた"何か"が取れた。
暗闇の中、夜目をこらせば見えたのは、
ーーー小さな、ひとひらの花びらだった。
見覚えのあるそれ。・・そういや、塾にも
咲いてたっけな。
(・・そうか、もう、春か)
そんな、当たり前のことを思い出す。
戦争が始まって、季節なんざ感じたことが
なかった。
よく見れば、周りを舞う花びら達に気づく。
ーーーあぁ、でも、
「・・・何で、こんなとこに____ 」
荒れ果てた土地の中、優雅に舞う花びら達。
身勝手な戦争のせいで、ここら一帯の草花は
枯れてしまっていた。なのに、なぜ・・。
小さな疑問とともに、もう一度、何気なく
あたりを見渡してみれば
「ーーー・・ッ、は?」
突如目前に現れたのは、月夜に照らされた大木
そこだけが、まるで舞台のように明るくて。
その木頭は、ーー舞い散る花びらと同じ、
鮮やかなピンクに染まっていた。
・・・満開の桜が、目の前で生き生きと
咲き乱れていたのだ。
「こりゃまた、何で____ 」
花びらの出処はここだったのか。・・いやでも
なぜ、こんな辺境の地に桜なんざ・・。
新たな疑問をにじませる俺の耳に、その時、
ーーー再び、あの声がこだまする。
それはどうやら、・・その舞台の中から
聞こえてくるようだった。
.
(・・・ほんと、どうなってやがる)
一歩、二歩と近づくうちに見えたのは、
大きな桜の木の下で舞い踊る、ーーー1人の女
月明かりに照らされた綺麗な髪を揺らし、
楽しげに頬を緩ませながら、詩を口ずさむ。
「ーーーわが佇つは時のきりぎし今生の桜ぞふぶく身をみそぐまで」
繰り返されるフレーズを乗せるリズムが
毎回違うところをみると、どうやら音階は
デタラメらしい。
時折混ざる小さな笑いが、俺の心をくすぐった
・・まるで、ーーその一角だけが、違う世界なのではないかと疑うほどに、女はこの戦場に
不似合いな表情で、声で、・・詠い続けていた
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シュシュ☆☆(プロフ) - ピピコさん» ありがとうございます!もったいないお言葉です!最後まで目を通してくださり、ありがとうございました! (2017年3月27日 18時) (レス) id: 61b42241f1 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ - とても綺麗なお話ですごく好きです!タイトルも素敵で全体的に私的ドストライクでした!これからも頑張ってください! (2017年3月26日 21時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
シュシュ☆☆(プロフ) - 紫蘭さん» ありがとうございます!しっとりした恋が書きたくて衝動的に作った作品でした!最後まで読んでくださりありがとうございました! (2017年3月2日 0時) (レス) id: 61b42241f1 (このIDを非表示/違反報告)
紫蘭(プロフ) - 完結おめでとうございます!儚い恋もいずれは、叶うんですね!こんな恋もいいなと思いました。次回作、頑張って下さい! (2017年3月1日 19時) (レス) id: 1847792d84 (このIDを非表示/違反報告)
シュシュ☆☆(プロフ) - ミイナさん» いつも応援ありがとうございます!辰馬オチ、絶対いつかは書きたい作品です。完成度はわかりませんが、ネタを探してみます!気長にお待ちいただけると嬉しいです! (2017年3月1日 11時) (レス) id: 61b42241f1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:シュシュ | 作者ホームページ:
作成日時:2017年2月22日 0時