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寂しげに ページ18

吹き荒れる風。砂埃が舞う中、
ーー俺は、数日ぶりに女の詩を聞いた。








「散るという飛翔のかたち花びらはふと微笑んで枝を離れる」





相も変わらず綺麗な声で、俺を惹きつける。
久々に聞いたそれに、自然と足が早まった。

ーーけど、





(・・・何だ。いつもと違う)


















「ーーよお、」


「・・あら、銀時」




花びらの中で舞い踊っているはずのそいつが、
ーー今日は立ち止まり、精一杯首を伸ばして
桜を見上げていた。その悲しげな色を混ぜた
詠声は、俺の声掛けとともに止んだ。

振り向いた顔。整った口元が、力なく笑う






「何だか、久々だね」

「そうだな」




そいつは、心ここにあらずといった感じで。
社交辞令のように挨拶が交わされた後、
再びAは桜を見上げだ。

俺は横に肩を並べる






「・・何で、しばらく来なかったんだよ」

「待ってたのかい?」


「悪ィか」


「悪かないさ。嬉しいよ」




クスリ。今日初めて見る笑み。
ーーーー・・なぜだろう。何か、変だ。






「・・簡単な理由だよ。ここ最近、村で雨が降り続いてね。月が雲に隠れちまってたんだよ」


「ーーなるほどな」





月明かりに照らされている間だけテレポートするということは、悪天候の場合、その明かりが
うまく木に当たらねーのか。









「ーーー桜は、・・今日がピークだ」




納得した俺の耳に、小さく寂しげな呟きが
落ちた。





「・・ピーク?」
「今日がきっと、一番綺麗な桜だよ」





「運が良かったね、銀時」なんて笑うそいつであるが、寂しげな感じは消えなかった。






「そりゃ、喜ばしいことじゃねーか」


「・・あぁ、そうだね」





確かに、風に舞う花びらはいつもより生き生きと散って地に沈み、見上げれば視界いっぱいに
広がるピンクは、いつも以上に美しい。






(ーーーー美しい、か)





この戦時、そんな感想を抱くことになろうとは
思わなかった。ーーけれど、それならなぜ、







「・・お前、何でそんなに悲しそうなんだよ」




今にも泣き出しそうな瞳に、
散りゆく桜を収めて。

言い聞かせるように→←一丁前に



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設定タグ:銀魂 , 坂田銀時 , 攘夷時代   
作品ジャンル:アニメ
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シュシュ☆☆(プロフ) - ピピコさん» ありがとうございます!もったいないお言葉です!最後まで目を通してくださり、ありがとうございました! (2017年3月27日 18時) (レス) id: 61b42241f1 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ - とても綺麗なお話ですごく好きです!タイトルも素敵で全体的に私的ドストライクでした!これからも頑張ってください! (2017年3月26日 21時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
シュシュ☆☆(プロフ) - 紫蘭さん» ありがとうございます!しっとりした恋が書きたくて衝動的に作った作品でした!最後まで読んでくださりありがとうございました! (2017年3月2日 0時) (レス) id: 61b42241f1 (このIDを非表示/違反報告)
紫蘭(プロフ) - 完結おめでとうございます!儚い恋もいずれは、叶うんですね!こんな恋もいいなと思いました。次回作、頑張って下さい! (2017年3月1日 19時) (レス) id: 1847792d84 (このIDを非表示/違反報告)
シュシュ☆☆(プロフ) - ミイナさん» いつも応援ありがとうございます!辰馬オチ、絶対いつかは書きたい作品です。完成度はわかりませんが、ネタを探してみます!気長にお待ちいただけると嬉しいです! (2017年3月1日 11時) (レス) id: 61b42241f1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:シュシュ | 作者ホームページ:   
作成日時:2017年2月22日 0時

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