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「そうなんですよ〜。
でも旦那、最近給料安いの!だから少しだけでいいからまけてくれない?」

少々手口が汚いけど仕方ない。私達は学生なんだから。

「うーん……まける代わりにあと1個好きなの無料であげる、てのはどうだ?」
この簪は絶対まけないってきめてるんだと言う店員さん。

どうやら思い入れがあるみたい。
買わない方が良かったかも、なんて思ったり。

「でも嬢ちゃんなら大事にしてくれそうだし安心して売れるよ。」
笑いながら言ってくる店員さん。

なら尚更大切に扱わないとね。

好きな簪選んできな、と言われさっき迷った簪を持ってくる。

「お、これを選ぶなんてやっぱり目が高いね。」

どうやらさっきの簪もこの簪もどちらも店員さんの奥さんが作ったものらしい。

「どっちも初めて作ったんだ。ずっと弱音を吐きながら。」
と、懐かしさに浸っている。

尾「この簪たちすごく綺麗で好きです。」

ずっと黙ってた勘右衛門が口を開く。

「だろ?妻はもう簪は作ってないんだ。今頃和室で腹出して寝てる頃だ。」
笑いながら言う店員さん。

「もしまた奥さんが簪作り始めたら、私買います。」

「そりゃ嬉しいね。
本当はこっちもまけないつもりだったんだけど、お嬢ちゃんならもう構わないよ。」
そう言って私が持ってきた2個目の簪を指さす。

この話を聞いた上で夫婦と騙して買うのはさすがに良くない、ってことで正直に言おうと勘右衛門と矢羽音で話す。

「すみません。
あの、実は私たち夫婦じゃないんです。ただ学園が同じの友達なだけです。」

すみません、と勘右衛門と2人で謝って2つの簪分のお金を机の上に置く。

「そうだったのか。
まあでもいいさ、それでも2人がいい人ってのは伝わってきたから。
それに学生ってことなら負けた方が良さそう。」

だから代金はさっきのままでいいよ、と言う店員さん。

「でも……。」

「その代わりと言っちゃなんだけど、その簪付けて待っててくれないか?
妻に見せたいんだ。」

そう言って席を外す店員さん。


「勘右衛門、付けてくれない?」

尾「いいですよ。」

「……ねぇ、あんなの聞いてたら結婚っていいものだと思ってくるよね。」

尾「……A先輩結婚するんですか?
前は絶対したくなーいとか言ってたのに。」

「それは好きでもない人との政略結婚の場合の話。」

尾「てことは俺とってことですね。」

「あ、いつもの勘右衛門。」

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作者名:ぽぽぽ | 作成日時:2023年7月17日 20時

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