そういう関係 3-江口拓也-

密着 ページ32

＿＿昔は好きだったのに今は怖い


そう語るのは、声優、そして歌い手として活躍する笹野A

2足のわらじで活動する彼女に我々は密着した




1991年に東京都港区に生まれた彼女は、物心が着く前に実の両親を事故で失った



「顔は思い出せないです
写真はあるんですけど、正直親だって思えない」



様々な事情が重なり、養護施設へと入った笹野
それから数年経った小学1年の時、養子縁組を受け、育ての親の元へ引き取られた笹野は当時のことをこう語る




「幼いながら、赤の他人だっていう認識はありましたし、両親も、その両親の実の息子である私の兄も、私に対して養子だって隠してませんでしたね」




それが裏目に出たのか、小学3年生の時彼女は[親なし子]というあだ名で呼ばれ始めてしまう




「腹立ちましたよ
実の親が亡くなったことなんて私からすればどうしようもない理由なのに、そんなことで差別対象になるのかって

まあ小・中学生のいじめ理由なんてしょうもない理由でしかないでしょうけどね」




そのいじめにも耐え続けていた彼女を更なる不幸が襲う

音楽関係の仕事していた育ての親が、またも事故で亡くなってしまうのだ
それは瞬く間に近所へ広まり、彼女へのいじめはヒートアップする


未成年ではあったが、兄が社会人であったことを踏まえ、親戚が半年に1度顔を出すことを条件に2人で暮らしていた笹野

彼女は引きこもりがちとなり、やがて不登校となった




「小・中は月に1回別室でテストだけ受けに行ってました
先生方もいじめの存在はわかってくれていたし、どうにか無くそうとしてくれたんですけど、火に油を注ぐ形になっちゃって

結局逃げちゃったんですけどね」




中学も、小学校時代と変わらない顔ぶれが揃うため、殆ど登校していなかったという

家に引きこもる生活の中、彼女が触れ続けていたのは育ての親が人生を捧げた音楽だった


独学で形見であるギターを弾き、ピアノを弾き続けた彼女

通信制高校へ進学し、殆どの時間を音楽に費やす日々
そんな中で歌い手、さぁの。が誕生する


きっかけは、父方の叔父

今爆発的人気を誇るボーカロイド制作メンバーである笹野の叔父は、笹野へ当時開設されたばかりの動画投稿サイトについて話した




「音楽だけは自信があって
何もかも他人に評価されるのが怖いし、人の目が嫌だったのに、音楽だけは大丈夫だって思えて」

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