そういう関係 3-江口拓也-

言葉より ページ3

「ただいま〜」

江「おかえり、何もなかった？」

「大丈夫」




収録と打ち合わせが終わり、帰宅すると玄関で出迎えてくれる

あの日以来、仕事に出掛ければ毎回心配してくれるし、時間が合えば送り迎えもしてくれるように


持て余していた車はいい具合に使われ、手持ち無沙汰になっていないことに少し感謝している




江「ご飯作ったから、手洗っといで」

「カレーの匂いはするけど、サラダはあんの？」

江「あーーーーる！
いつも野菜野菜言うからちゃんとしました〜！」




バッグを手渡し、洗面所へ

鏡に映るのは、メイクをしてても分かる顔色の悪さ


食欲はある、睡眠も今までにないくらいちゃんと取れてるし、規則正しい……とは言えないが、まともな生活はしている筈なのに

理由は分かっている

怯えてばかりだからだ




「はぁ……考えても解決しないもんなあ……」




私の気持ちと、時間に任せるしかないのだ

あの時と違って、今は周りに人がいる


パンッと、両頬を叩いてキッチンに向かうともう既にテーブルに運ばれた後だった




江「あ、俺スマホベッドに置きっぱだ、先食ってていいよ」

「あいよ」




そう言って寝室へ向かった拓也

折角一緒に食べるんだから、待つに決まってるのに

そう思い、テーブルをみるとカレーとサラダ、そしてグラスと缶ビール




「……ッ意味わかんないでしょ……
バカじゃん……」




ど真ん中、見ろよと言わんばかりに置かれていたのは婚姻届

力が抜けて、床に座り込むとポンっと頭に手が乗った




江「ビックリした？」

「するに決まってるし、マジでもうホント………！」

江「プロポーズしろしろって言いながら、いざって時はひよってんなよ

これちゃんと付けて」




手を取られ、指に嵌められた華やかな指輪


あ、ヤバい、泣くかも


目頭が熱くなって思わず俯くと、頬を両手で包まれ顔を上げられた

何だか小っ恥ずかしいのに、視線はズラせなくて




江「何で今？って思われるかもしんないけど、今だからこそなわけ

お返事ないけど？」

「ホンット、世の中に出回って荒れたら拓也のせいだからね」




言葉よりも行動でプロポーズしてきた彼に対抗して、キスで返事をした

・→←ついった

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す