登坂広臣 ★ 短編集２ (ページ8)

今日:30 hit、昨日:8 hit、合計:1,000,267 hit

▽ ページ8

「…位置について。よーい、ドン。」

声と共に俺は走り出した。

「臣～、こっち。」

体育委員の隆二に誘導され

お題が入った箱から

１枚紙を取り出した。

「…はい、開けて？」

なんかニヤニヤした隆二の顔に

少しムカつきながら取り出した紙を見た。

……はっ？

「ほら臣、ダッシュ。頑張れ～！」

なんだよ、これ。

あんなにいっぱい紙のある中から

なんでこれなんだよ。

紙に書いてあるものが

どこにあるかすぐ分かる。

何も考えずそこに向かった。

「…行くぞ。」

「えっ？な、なに？借り物って私なの？」

Aの手を繋ぎ

ゴールテープを目指す。

体育祭の神様、

これはアンタの仕業だよな？

運悪くこんな紙引かないし、普通。

「…はぁ、はぁ…広臣…」

ゴールテープを切る前に

紙と借り物が正しいか係りの奴に見せた。

顔から火が噴きそうなくらい恥ずかしい…

「はい、オッケーです。そのままゴールに向かって下さい。」

はい、オッケー。って

お前知らねぇだろ(笑)

と軽く心の中でツッコミ、

ゴールテープを切った。

「…広臣…」

「大丈夫か？」

Aは息が上がってしまい

その場に座り込んだ。

額からスーッと流れる汗を指で拭う。

ビックリした顔で俺を見上げ

恥ずかしそうにまた俯いた。

「…そ、そういえば…紙になんて書いてあったの？」

「ん？見たい？」

俯いたまま顔だけ縦に振る

Aに手を差し出した。

「えっ？」

「…ちょっとあっち行くぞ。」

うん、って躊躇わず

俺の手を握り半歩先を歩く俺の後ろを

少し小走りでついてくる。