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わん!と吠えるや否や走り出した愛犬の向かった先。
それを目で追った私から見えたのはこんな田舎には似つかわしくない……あの車だった。
大きくて高級そう、なんて私が思わず漏らした言葉に笑った彼の、あの車。
それがこんな農道を走るなんて考えられないのに、ちょっとの土煙を舞わせながらやがて私の農園の手前で止まって。
出迎えるみたいにポチはその車目掛けて一直線で
少し遠くからその人物が運転席から降りて来た。
「……お!ポチ、お出迎えなんて偉いなー!
ちゃんとお利口にしてたかー?」
キザなサングラス姿さえ様になってて、相変わらずのサンダルだって彼の代名詞みたい。
間延びしたおっとりなその低音の声だって。
もさもさな黒髪も、気だるげなラフな格好さえお洒落に見せるのは彼しかいなくて……私はより一層視界がぼやけてしまった。
そのタイミングでぶわぁっと夏風が強く吹いて。
私の被っていた麦わら帽子が飛んいってしまい
ころころと彼の足元に転がって。
ばたん、と車のドアを閉めた大きな手が私のそれをゆっくり拾った。
「……泣くなよ。なに、そんなに俺に会いたかったの?」
ぼろぼろに涙を溢しては無言な私に
ぽすっ、と被せられたお気に入りの麦わら帽子。
むかつく発言は上から目線で
へらりと笑うそれにぴくりとしたけれど、今の私は何がなんだか頭が追い付かなくて考えられなくて。
……今さら何しに来たの、
急な仕事が入った、なんて少ない言葉は
私には足りなすぎて卑怯で、もうこのままサヨナラなんだと思ってた。
「……っちがうもん。別に会いたくなんかなかった、
私、いま忙しいの。」
自分で自分の涙を少し乱暴に拭い、くるりと背を向けて。
今の畑の状態と私の見た目も心も全部全部……あまりにぐちゃぐちゃで。
どうしようもないバカな私……こんなの、ただの八つ当たり。
でも、これ以上惨めな思いなんかしたくなかったんだ。
「ふはっ!なんでそんな怒ってんの?
でも俺、めっちゃ今疲れてるの。夜中まで仕事して
そのままぶっ通しでソウルから運転してきてすげー疲れた。
……なんでかわかる?」
「……っそんなの知らないよ!
忙しいって私、言ってるじゃん!」
苛立ちがどんどん膨れ、テヒョンのへらへらした感じに凄く腹が立った。
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tete?(プロフ) - 素敵すぎます!!キュンキュンしたし号泣しました!ぜひ続編が読みたいです! (2021年10月22日 20時) (レス) @page50 id: 9f2748196d (このIDを非表示/違反報告)
かおりんこ(プロフ) - 初めまして!可愛いキュンキュンするお話をありがとうございました!ソウル編ぜひお願いしたいです🙏💜 (2021年10月21日 20時) (レス) @page50 id: 938f0fcb54 (このIDを非表示/違反報告)
かづき(プロフ) - はじめまして。二人のかわいらしさにかは寄せられて、毎回更新が待ち遠しかったお話です。幸せな結末でうれしかったんですが、もう終わっちゃうのかと寂しくなりました。ぜひ、続編をお願いします。楽しみにしています。 (2021年10月20日 16時) (レス) @page50 id: 3327e12a6b (このIDを非表示/違反報告)
hal(プロフ) - はじめまして。楽しく読みました♪ ソウル編も読ませていただけましたら嬉しいです。 (2021年10月20日 16時) (レス) @page50 id: 17280345a0 (このIDを非表示/違反報告)
まりか(プロフ) - キュンキュンするお話ありがとうございます( ; ; )ソウル変更楽しみにしてます💜 (2021年10月20日 3時) (レス) @page50 id: fc911e40d3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ミイミイ | 作成日時:2021年9月9日 23時